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1 :
名無しさん@chs
2008/02/29(金) 02:02:51 ID:ai2IZ9fw
連投規制の緊急避難用に作った掲示板です。
思わぬところで規制にかかって投稿できなくなったときは、
一旦この掲示板に投稿して、
その後でゆっくり本来のスレに投稿しましょう。
2 :
名無しさん@chs
2008/02/29(金) 02:04:34 ID:ai2IZ9fw
ADももう発売という昨今。
今更ながら、仮想シルファシナリオを書いてみました。
もっとも情報収集が完全じゃない上に、いくつかの明確な矛盾点がありますが。
3 :
箱入り娘が届いたら1
2008/02/29(金) 02:23:26 ID:ai2IZ9fw
それは一週間のうちで、もっとも開放感を覚える時間。
土曜日の最後の授業が終わった学校からの帰り道を俺は歩く。
特に予定があるわけではないけど、それなりに心が躍る時間を俺は楽しんでいた。
さて、今日はなにをしようかな……
「あ、スンマセン。このあたりで河野さんのお宅って、ご存知ありません?」
「はい?」
いきなり呼び止められて振り向くと、そこに若い男性が制服姿で俺に手を上げている。
おそらく宅急便の配達員さんだ。
この手の人は一目でそれとわかる格好をしているから助かる。
「えっと、河野なら俺の家ですけど?」
「あ、そうなんですか。あなたのお宅に荷物が届いてますけど」
「ありがとうございます」
……と、お兄さんの傍らにそびえるのは軽く40インチテレビのサイズはあろうかという大きな段ボール箱。
このでかいのが俺への荷物?
まあ疑問点はさて置いて、俺は荷物運びに苦労している様子の配達員さんに声をかける。
「あ、運ぶの手伝いますよ」
「スンマセン、助かります」
二人がかりでやたらと重いダンボールを持ち上げようとすると……
ぐ! 重い!?
持ち上げようと力をいれた瞬間、ハンパじゃない加重が腕と腰に加わった。
「く……」
精一杯の力を腹に込めて、玄関まで二人がかりでダンボールを運び込む。
やばいことに、重さでダンボールの底が抜けそうだ。
ここで箱が壊れたら面倒なことになる。どうか玄関まで持ってくれよ……
俺の祈りが通じたのか、なんとかダンボールは崩れることなく玄関まで到着した。
「はあ、はあ……ほんと、助かりました。お客様、こちらにサインを……」
荷物を運びなれているはずのお兄さんも息を切らせている。
俺の方は言うに及ばずだ。
「い、いや……どういたしまして」
しびれる腕をふって俺は答える。
お、重かった……正直、手伝いを申し出たことを後悔したくなる重さだった。
でも一人で運べる重さじゃなかったろうし、仕方ないか……
「はい、サインありがとうございました。それでは」
配達のお兄さんが帰って、静かになった玄関には重くて巨大なダンボールが残された。
狭い玄関の8割を占領してしまうダンボール箱。
さて、こいつはいったいなんなんだ?
興味しんしん、俺はダンボールを軽く検品してみる。
「えっと、差出人は……姫百合珊瑚?」
その名前を見た時点で、ちょっと悪い予感はしていた。
珊瑚ちゃんに関わると、いつも面倒に巻き込まれることが少なくない。
本人はとてもいい娘なんだけど……どうしてかなあ。
荷物の品目の欄には太文字で大きく『だいじなもの』と書かれているだけだった。
ある意味珊瑚ちゃんらしい。
「結局開けてみないと中身は分からないか……」
覚悟を決めてダンボールに手を掛ける。
まさか爆発するようなことも無いはずだ。多分。
中身がなんだか分からないので慎重に開けるべきだろう。
カッターは使わずに手で表面のガムテープを少しづつはがして行く。
とりあえずダンボール箱の上辺が剥がされると、中身もやたら厳重に梱包されているのが隙間からかろうじて見える。
これは中身を出すのには苦労しそうだな。
とりあえず、中身を確かめる為にダンボールの隙間から手を差し込んで……
むにゅ。
「へ?」
今、俺の手のひらに触れた柔らかくも暖かい感触はなに?
「あ、あれれ……?」
むにゅむにゅ。
まるで生き物に触れてるみたいな、暖かくて柔らかい感触。
き、気持ちいいけど……
このサイズにこの感触は。
この箱の中身は……女の子??
4 :
箱入り娘が届いたら2
2008/02/29(金) 02:24:02 ID:ai2IZ9fw
「ちょ、ちょっと待て。これは……やばいだろ、いろいろと」
焦って引き抜こうとした手がまた触れた。
むにゅん。
や、やべ。い、今触ったのはどこだ???
もう、むちゃくちゃ犯罪くさい。こんなことしてていいのか?俺?
「いや、だってこのままにしておくわけにもいかないし……なあ?
と、とにかくこの箱からこの子を出してあげないと……だろ?」
と、誰に対してのいい訳だかわからないものをぶつぶつと繰り返しながら。
俺はなおもダンボールの解体作業を続けていく。
し、慎重に……爆弾の解体だって、こんなにドキドキしないよなあ。
いや、ある意味この箱は爆弾そのものだ。
苦労して作業を続けるうちに、ダンボールの中に閉じ込められていた『だいじなもの』が、少しづつその姿をみせていく。
青いメイド服の端。
美しくて柔らかそうな金髪。
そして、やや幼さを残した顔立ちがダンボールの中から。
「はあ……」
俺はやった。
やっちまったなあ……
思わず溜息が出る。
もう、目の前の現実は否定しようがない。
梱包を解いたダンボールの中には、年頃の美しい少女が。
まるで眠りついた子猫のように膝を抱えて丸まっていたのだ。
一仕事終えた俺は、額に流れる汗を拭いながら一言。
「やばい……犯罪だ」
この現状を言い表す言葉はそれに尽きる。
年頃の女の子がダンボール箱に詰められて俺の家に配達されてきた……ってか?
どんだけ性質の悪い冗談なんだよ。
「これがご近所さんに知れたら、俺は確実に逮捕だな……」
思わず額に冷たい汗が流れる。
例えば配達のお兄さんとこの箱を運んでいたとき、もし底が抜けて中身を見られていたら?
『男子高校生(T君)・少女を誘拐そして監禁?!』
新聞に踊るショッキングな文字が頭の中を駆け巡る。
俺はその後に悪夢を想像して、頭をかかえた。
つーか、これがどうやって荷物検査を通りぬけてきたんだ??
「ふう……まあ、それさておき」
で、それらのさまざまな葛藤と焦りはとりあえず置いといて。
いったい、この女の子は誰なんだ?
俺はダンボールの中身をじっと観察。
安らかな呼吸音と微かに小さな胸が上下する様はここからでも見てとれる。
彼女が生きていることには間違いない。
だが少女は未だに目覚めない。天使のように安らかな寝顔は美しくもまだまだ発展途上の幼さを残していた。
その可憐さがさらに俺の罪悪感をかきたてるのだが。
ん?
ところでこの女の子。
出会ったことはないはずだけど……でも、どっかでみたような気もする。
えっと、誰だっけ? 記憶がもうここまで出掛かってるんだけど。
(なあ……君は誰なんだ?)
「ん……」
と、俺の心の中の呼びかけが届いたかのように、女の子の閉じたまぶたが震えた。
ダンボールに包まれた眠り姫が、今目覚めようとしてるのか。
って、いや! ちょっと待ってくれよ!!!!
俺の方はまだ心の準備が……
ぱち。
願いもむなしく、青い瞳がぱっちり開く。
目と目が遭う瞬間。
澄んだ青い瞳が真っ直ぐに俺を見つめている。
その光景だけならまるで恋の始まりみたいだけど……なにしろ状況は最悪である。
俺の心臓はバクバクだ。
もちろん恋のときめきなどではなく。
「……い……」
少女の小さな唇が震えて、そこから微かに声が漏れだす。
それはもっと聞きたいとさえ思うような、美しい声だった。
「い??」
「い……」
「…………」
「いやああああああ!!」
でも、流石に悲鳴は勘弁して欲しかった。
ご近所に響き渡る大声で叫ぶ女の子。
ああ、親父……母さん。
俺、明日から塀の中で暮らすことになるかもしれません……
不幸中の幸いか。結局少女の叫び声がご近所様に通報されて、警察官が駆けつけてくるようなことにはならなかった。
それでも俺が現状の危機から脱したわけではない。
女の子の涙はある意味核兵器より恐ろしい。
すくなくとも彼女の涙は俺の平凡な日常を再起不能に打ち砕ける可能性を持っている。
「あ、あなたは誰なんれすか! シルファをこんなところに連れ込んで……いったいなにをするつもりだったのですか?」
ひとしきり叫んだそのあとで、焦った様子で少女は俺に矢継ぎ早に質問を投げかかる。
その様子を見る限り、とりあえず身体は元気なようでそれは良かった……なんて言っていられない。
少女の不安と問いかけは実にもっともなものではあったが、あいにくと俺はそれに答える術が無い。
「いや……目的もなにも。それは俺が聞きたいくらいで……」
「あなたが何を言っているのか、シルファには訳が分からないのれす!! あなたは、とっても変な人なのれす!!」
そ、そうかもしれんが……
いかんせん、俺の責任じゃないぞ。
と、女の子は何か恐ろしいことに気が付いたという表情をして、とつぜん自分の身体をかばうかのように抱きしめた。
「し、しかも……眠ってる間に身体のあちこちを触られた形跡が、シルファのデータに残っているのれす……」
ぎく。そ、それは……
青い瞳が怯えの影をたたえて俺を見つめていた。
その瞳の真剣さからは逃れられない。
「あ、あなたが……眠っているわたしの身体に触れたんれすか……?」
「じ、実はそうです……」
罪悪感が咄嗟に正直な答えを俺の口から出した。
でも、次の瞬間には後悔。
「あう……」
涙交じりの声が少女の口から。
ああ。君の気持ちはよく分かるよ、でもこっちにもいろいろ事情が……
お、お願いだからそんな目で見ないで……
「いやあああああああああああああ!!! 変態ーーーーー!!!!!!!!!」
少女の叫び声が再び耳に響き渡る。
俺の胸にも突き刺さる。
……すいません。ごもっともですね、はい。
5 :
箱入り娘が届いたら3
2008/02/29(金) 02:25:06 ID:ai2IZ9fw
自らの名を『シルファ』と名乗ったこの少女。
はて、どこかで見たことがあったような。
名前も聞いたことが……あったっけ?
でもとりあえず俺には思い出せない。
「いきなりこんなボロイお家に連れ込まれて、ものすごく怖いのです……
しかもよく分からない人が、意味不明のことを口走って、眠っているシルファの身体に触っていたのです。
こわいのれす、やばいのれす……シルファは無茶苦茶ぴんちれす……」
少女は……いや、シルファは涙さえ流しながら切々と訴える。
もうその言葉は俺に対して向けられた言葉ではなく、独り言のような形に移行しているようだ。
言葉の端々に微妙に毒も含まれていて、案外見た目のイメージとは異なる性格なのかもしれない。
(言ってることは全て間違ってはいないけどな……)
けれどもこうやって一方的に言ってみれば、明らかに俺の方が変質者だよ。
シルファの立場からみればそういう風にしか見えないのだろうけど。
とにかくなんとか状況を説明して俺の無実を……
いや。そのまえに俺の方が状況を知らんとどうにもならんだろ。
そして何らかの情報を持っていそうなのは、この子だけだ。
俺は意を決して少女に問いかけた。
「あ、あのさ、君はなにか聞いてないの? 俺、珊瑚ちゃんの友達なんだけど」
「さ、珊瑚さまのおともだち……れすか? あなたが?」
あ、やっぱり珊瑚ちゃんのことは知ってるな。
でも、俺の言葉を信じた様子が無いぞ。
「でも……とてもそうは見えないのれす」
「ま、まってくれ。これを見てくれよ」
疑いの目を向けるシルファに、俺は慌ててサイドスタンドにあった写真立てをつきつける。
「あ、これは珊瑚さま……の写真なのれす」
「な? お、俺も写ってる。 ちゃんと仲良さそうだろ?」
「は、はい……本当なのれす。驚きれす」
シルファは、とても驚いた顔で俺の差し出す写真を見つめていた。
「では……珊瑚さまのおともだちが、どうしてシルファのことを誘拐したりするのですか?」
「してないよ!! 誘拐なんて!」
「きゃっ……」
危険な言葉に思わず怒鳴り返してしまった。
シルファはまた怯えたようにすくんでしまう。
「す、すまん……怒鳴ったりして悪かった。
別に脅かすつもりは無かったんだ」
「こ……怖いのれす、やっぱり怖いひとなのれす」
いや、君が怖いのもわかるけどさ。
俺の方も君の言葉がすげえ怖いよ。
さっきから心臓がバクバク鳴りっぱなしだよ。
「俺のほうは、なにもしてないよ。
さっき、君がとつぜん宅急便で俺宛に送られてきたんだ。
俺は君のことだって、さっきまで全然知らなかったよ」
「そんな話、とても信じることが出来ないのれす」
「…………」
シルファは冷たい瞳できっぱりと言った。
そりゃそうだ。と俺は思う。
俺だってこの状況が信じられないし。
どんな犯罪者の言い訳だってこれよりはマシだろ。
でもこれが事実なんだから仕方ないじゃないか。
「ねえ、君の方はどうなの? 今日の君に何があったのか教えてくれないか?」
「今日のシルファ、ですか? シルファは、気が付いたらここにいたのれす」
「だからその前だって」
「え、と……」
シルファは視線を下に向けて、考え込む仕草を見せる。
その顔立ちは……やっぱり、どこかで見たことがあるような。
俺はこの子を知っている……のか?
「今日は……珊瑚さまがシルファの緊急メンテナンスがしたいって。
研究室に連れられて、それで強制スリープ状態になって……
そこから先の情報はほとんどありません……」
そのシルファは頭の中の記憶を思い出すように語る。
メンテナンス? 強制スリープ?
この子ってなんだか自分が機械みたいなことを言うんだな、と思いかけて。
その瞬間になって俺はやっと気が付いた。
「君はイルファさんたちの妹の……」
「は、はいれす。シルファはイルファ姉さまたちの姉妹機の最新型メイドロボれす」
そ、そうか。
そういえば、さっきだって『データに残ってる』とか言ってたもんな。
焦っていて気が付かなかった。
しかもシルファはイヤーカバーをつけていない。
あまりにも普通の女の子と変わらないその姿は、俺にメイドロボの存在を完全に忘れさせていたのだろう。
「あなたは、シルファがメイドロボだとは気付いていなかったのれすか?」
「そうだよ。ごめんね、さっきまで全然気が付いてなかったんだ」
われながら、本当に間抜けな話ではある。
確か俺はシルファのことも名前だけは知っていたはずだよな。
しかもイルファさんと顔立ちは似てるんだし。
(イルファさんとミルファの妹か……確かにそんな感じだよな)
思わずシルファのことをまじまじと見つめてしまう。
うん。本当に可愛い妹って感じだ。
身長はそれほど低くはないけれど、シルファの顔立ちにはどことなく幼い雰囲気が漂っている。
うつむくく顔もどことなく可憐で儚げで。
そしてその胸のサイズもそれ相応に……
「あ、あの……本当にいやらしい気持ちでシルファを誘拐したんじゃないですよね?」
「ち、違うって! そんな気持ち全然無いって!!」
す、すいません。
今の言葉にはちょっとだけ嘘がありました。
思わず誘拐してしまいたくなるくらい、あなたは可愛いです。
「あの……それで、シルファはどうしてここに居るのでしょうか?」
「いや、俺にはわからないけど。でも珊瑚ちゃんに聞くのが一番早いんじゃないかな?」
ダンボールに書いてあった荷物の宛名。
そしてシルファを眠らせた張本人。
おそらく今回の仕掛け人は珊瑚ちゃんだろう。
少なくとも彼女は何か知っているはずだ。
「それもそうれすね。ではちょっと電話をお借りして……」
そう言いつつダンボールの中から立ち上がりかけたシルファが、何かに気が付いたように不意にその動作を中断する。
そして何故か困ったような瞳で俺を見つめると、こう告げた。
「あ、あの。こんなところに手紙……みたいなものが、あったのれす」
ひどく狼狽したようなシルファの声が、非常に重要な情報を俺に告げた。
手紙? ひょっとして、それには重要なメッセージが書かれているのでは?
「何?! 手紙か!? それをすぐ見せてくれ!」
「?!」
だが、俺の言葉になぜかシルファの顔は耳まで真っ赤になる。
「い、いきなり見せろだなんて! あなたはやっぱりえっちなのれす!」
「へ?」
「あ、あっちを向いてて下さい!い、いま、手紙を出しますから……」
「だ、出す? な、なんで……」
「いいから!!」
「は、はい!」
シルファの必死さに思わず気圧されて俺は背中を向けた。
「まったく……本当に、本当にえっちなのれす……」
そしてその背中から聞こえてくるのはそんな呟きと……
『シュルシュル……』
これは多分服を脱いでる音?!
て、手紙、何処にあったんだよ?
いや、深く考えるのはよそう……
「もう、こっちを向いていいれすよ……」
やっと許しを与える声に振り向くと、耳まで真っ赤にして俯いているシルファがそこにいた。
なんかそんな顔をされると、また俺が悪いことをしたみたいだ。
「あの……この手紙、あて先が”河野貴明様”となっているのです。これって……あなたの名前ですよね」
「あ、ああ。そうだけど」
「だったら、これを読むのはあなたれす……」
そう言いつつも、シルファはちょっと困ったような目で俺を見ている。
た、多分……この手紙を俺に手渡すことに抵抗があるのだろうな。
手紙の中身は気になるけど、別に俺が読む必要はない。
「それ、君が読んでいいから」
「そ、それはダメなのれす」
俺が告げると、シルファは慌てたように首を横に振った。
「いいよ。たとえ俺宛でも俺が読んでいいって言ってるんだから」
「ダメなのれす。この手紙を最初に読むのは、あなたなのれす。シルファは人に宛てた手紙を読むようなことはしないのれす。
そんなことをしたら、この手紙を書いた人も、そしてあなたも。とても困ることがあるかもしれないのれす」
「……」
訴えるシルファの顔は、さっきまでの怯えた顔とは全然違ったとても真面目な顔だった。
「はい。読んでいいのれす」
「う、うん。ありがとう」
差し出された手紙をそっと受け取りながら、俺は思う。
(この女の子、思ったよりもいい娘だよな……)
6 :
箱入り娘が届いたら4
2008/02/29(金) 02:25:45 ID:ai2IZ9fw
しかし受け取った手紙は何故か人肌の温もりが……
い、いやいや。
俺はできるかぎり無心になって手紙の内容に目を通す。
期待に反して、手紙の内容は意味不明だった。
「貴明へ。
シルファにお料理の特訓をしてあげてください。
上手になるまでシルファは帰ってきたらあかんよ?」
たったそれだけ。
裏返してみても、逆さに読んでも灯りにすかしてみても、
他にはなにひとつ書かれていない。
「……なんでやねん」
思わずエセ関西弁でツッコミをいれてしまう俺。
もちろん手紙は返事をしない。
しかし何故俺に? どうして? いったいなにをしろと?
「あ、あの……」
シルファが様子をうかがうような瞳で俺を見つめていた。
手紙の内容は意味不明だが、彼女にはそれを知る権利があるだろう。
「えっと、珊瑚ちゃんが君のことを特訓しろって。上手になるまで、君はかえってきたらダメだってさ」
「そ、そんな……困るのれす……」
いや、俺だって君に負けずに困ってるさ。
シルファは少し考え込み、はっと何かに気付いたような顔上げて一言。
「特訓って、あの……シルファにへんなこと、しないですよね?」
「し、しないよ!」
焦りからか思わず叫んでしまった俺に、さらに怯えてしまうシルファ。
「た、貴明さんはこわいひとなのれす……」
「ご、ごめん……」
はあ……
やっぱり珊瑚ちゃんに関わると、いつもとんでもないことが起こるんだよなあ。
それにしても、一体この女の子をどうすればいいんだろうか。
「シルファに料理の特訓ですか?」
「まあそういうことらしいな」
もう一度気をとりなおして、手紙の内容を正確にシルファに伝えるのにまた数十分。
この子と話してると異様に時間がかかる。
「珊瑚ちゃんが俺に望んだことはそれだけだ」
「でも、そんなことをしていったい何になるのでしょうか?
料理でしたら、イルファ姉さまやミルファ姉さまが……それに、瑠璃さまだってとても上手に料理を作ることが出来るのです。
いまさらシルファが料理を習ってなんになるのでしょう」
「それは俺にも分からないよ」
「それに……どうして料理を教わるのに貴明さんのお家に来なければならないのでしょうか?
貴明さんは人に料理を教えるのが得意なのれすか?」
「それが……自慢じゃないが、俺は玉子焼きをまともに焼くことさえ出来ない」
「…………」
「…………」
二人して溜息。
「まったく訳が分からないのれす……」
「そ、そうだね」
本当にどうしたものか……
当面の目的を見失ったのでが、自然と二人の交わす言葉も滞りがちになる。
俺は黙り込んだまま、ぼんやりと手元のティーカップを見つめていた。
シルファはといえば……彼女もまた自分の手元に視線を落としていた。
その手に握られていたのは、俺がさっき珊瑚ちゃんとの関係を証明するために渡したフォトスタンドの写真だった。
その写真を見つめるシルファの横顔が、何故だか微妙に暗い。
なぜ、俺と珊瑚ちゃんの写真をそんな顔で見つめているのだろう?
「ねえ、その写真がどうかしたの」
「いえ……わたし、珊瑚さまがわたしの知らない方々と一緒にいるお姿を始めて見たのれす」
シルファはじっと写真から視線を動かすことなく俺の問いかけに答える。
俺もシルファの真剣な視線につられてその写真に目を落とした。
この写真は、去年の冬にみんなで温泉旅行に行った時の写真だった。
写真に写った人物は俺と珊瑚ちゃんだけではなかった。
写真の中には瑠璃ちゃんとイルファさんとミルファ。そして、
「知らない女の人と……それに他の男の方までいらっしゃるのれす」
「それはタマ姉と雄二だよ。その二人も俺の友達なんだ」
「そうれすか……」
答えながらも写真を見つめるシルファの表情はやはり微妙。
なんとなく暗い顔だとは思うけれど。
何故そんな顔をしているのかまでは分からない。
「去年の冬、珊瑚さまが”みんなで温泉旅行に行く”と言い出したのれす。
突然のことだったので、お姉さまたちも大急ぎで準備をしていました。
シルファも行こうと珊瑚さまは言って下さいましたけど……
でも絶対に行くのは嫌だったので、シルファは一人お家でお留守番をしていたのれす」
「どうして一緒に行かなかったの?」
「シルファはお家から出るのが苦手なのれす。それに知らない方も一緒に旅行に行くという話を聞いていたので……
行きたくなかったのれす」
それはまた……筋金入りの箱入り娘だな。
「でも、珊瑚さまがシルファが居ないところで、
シルファの知らない方たちとこんなに楽しそうにしているとは知らなかったのれす」
「そうか……」
なんとなく、シルファの言いたいことが分かってきた気がする。
フレームいっぱいに写る仲間に囲まれた珊瑚ちゃん。
彼女はとても楽しそうに写っていて……でも、その写真の中にはシルファは居ない。
「でも、それはこの旅行に限ったことではないのれす。
最近の珊瑚さまは、誰かと楽しそうに電話で話したり、シルファを置いて何処かへ出かけていってしまうことが多くなってきたのです。
以前はもっとシルファと一緒に遊んでくれたのに……」
そして一言。
「シルファは……もう珊瑚さまに必要なくなってしまったのかもしれません」
「え?」
「いいえ。なんでもないのれす。
それよりよろしければ料理の特訓を始めませんか?
珊瑚さまがシルファに望んでくれることがあるのなら、シルファは出来る限りそれをしようと思うのれす。
だから貴明さんの家にしばらくお世話になってもいいれすか?」
「あ、ああ。もちろんだよ」
「それが今のシルファに出来る精一杯のことですから」
「う、うん……」
ちょっと言葉にひっかかる物を覚えたけど、シルファが特訓を始めようとしてくれていることは願ってもないことだった。
だから、今はあまり気にしないでシルファに頑張ってもらうのがいいと俺は思っていたのだ。
「で、あの。あなたの呼び方……なんれすけど」
「はい?」
シルファはちょっと小首を傾げて。
「あの……”ご主人様”ってお呼びしたほうがいいのれすか?」
「いや、もう貴明さんでいいから。
ご主人さまってのはもう十分間に合ってる」
「そ、そうなのれすか??」
俺はシルファの申し出をきっぱりと断った。
もう、これ以上俺のことを”ご主人様”って呼ぶ人が増えるのは正直困る。
「じゃあ貴明さん、とお呼びします。どうかシルファのこと、宜しくお願いします」
そう挨拶とともに頭を下げると、シルファは俺に向かってにっこりと微笑んだ。
それは、俺が初めて目にしたシルファの笑顔だった。
俺はその笑顔にひどくショックを受けたような気がした。
(あれ……? なんかおかしい)
可愛い笑顔だった。とても美しかった。
でも、それだけ。
俺は昔、雄二に誘われてメイドロボの展示会場に行ったことがある。
そこに展示されていた量産型のメイドロボたち。
彼女たちが浮べる完璧な笑顔。
シルファがさっき浮べた笑顔は、そんな笑顔にどこか似ていた。
「どうかしたのれすか?」
でもそう思えたのはほんの一瞬だった。
次の瞬間、俺をみて不思議そうな顔をしているシルファはさっきまでの普通のシルファだった。
その表情には、特別に不自然な違和感など感じられない。
「いや、なんでもないよ。
じゃあ始めようか」
さっきのは、きっと俺の気のせいだろう。
そう思うことにした。
7 :
箱入り娘が届いたら5
2008/02/29(金) 02:26:23 ID:ai2IZ9fw
料理の特訓といっても、俺自身は人に教えるほどの技術も知識も持ち合わせていない。
とりあえず、自分で料理を教えることなど出来そうにも無いので、俺は援軍を呼ぶことにした。
それに、シルファと二人きりで過ごす時間には、緊張感がありすぎる。
もちろん俺以上にシルファは緊張しているだろうけど。
シルファが家に来てから一晩が明けた日曜の朝。
俺は電話して彼女を家に招いた。
「お、おじゃましまぁす……」
おそるおそる……といった様子で玄関のドアから顔を覗かせるのは、われらが『いいんちょ』こと小牧愛佳。
そして何故かその背後に立つのは。
「なんだ、お前も来てるのかよ」
大人しい姉とは性格は正反対。
生意気で口が悪くて、性根が腐って……
「なによ?」
「別にお前を呼んだ覚えは無いんだけどな」
「お邪魔だったわけ?
日曜の朝から一人住まいの自宅に姉を呼び出して。いったい何を企んでいるかと思ってついてきてみれば……」
相変わらずの冷たい目で俺を睨んで郁乃は一言。
「いやらしい」
……今日一日でこのセリフを何度聞いたことか。
なんでこいつにまでこんなことを言われなきゃならんのだ?
いっとくが、お前をそんな眼で見たことは一度だってないからな。
「ないない。別に下心があって、愛佳を呼び出したわけじゃないって」
「そ、そうなんだ……全然無いんだ……」
と、何故かがっかりしたような愛佳の声。
「ふーん、別に姉には興味は無いの? だったら別にいいけどね」
「……そうなの? 貴明くん」
な、なんでそんなことを聞くんだよ……
「だからさ。俺はちゃんと目的があって愛佳に来てもらったんだってば。
そうだ。せっかくだから郁乃も協力してくれよ」
「でも……わたしなんかに何が出来るのか……」
「なんであたしがそんなことをしなくちゃいけないわけ?」
自信なさげに困惑している様子の愛佳と、不機嫌に睨みつけてくる郁乃に俺は頭を下げる。
「俺の大切な友達が困ってるんだ。
だから、頼む」
愛佳と郁乃は顔を見合わせて……頷いてくれた。
「うん……貴明くんにとって、大事なことなんだよね。
わかりました。あたしに出来ることなら」
「……ま、別にいいけど」
「よし。じゃあ、さっそく本人に会ってくれ。
ちょっと気難しいところもあるけど……根はいい子だからさ」
「わっ?? た、貴明さん、その方たちは誰なのれす?」
「初めましてシルファさん。
あたし、貴明くんのクラスメイトで小牧愛佳っていいます」
「あたしは妹の郁乃。よろしく」
「ま、また知らない人が増えたのれす…… いったいなんなのれすか??」
リビングに訪れた愛佳と郁乃を見て、またおどおどし始める様子のシルファだった。
この子、よっぽど人に会うのが苦手らしい。
「愛佳が料理をシルファに教えてくれるんだよ。
俺よりもずっと心強いだろ?」
「じゃあ……このお姉さんに教わって、ご主人様のエサを作ればいいのれすか?」
「え、エサって……あの……その言い方はちょっと……」
「ねえ……これのどこが”根はいい子”なのよ、貴明?」
俺を睨み付ける郁乃の瞳は極限に冷たい。
「い、いやあ……この子は言葉遣いを知らないだけだって……多分」
言い訳する言葉が苦しいのが、自分でも分かるほどだ。
でも、本当はいい娘だと……思うんだけどなあ?
まあこうして愛佳を先生役に、キッチンでシルファの料理の特訓は始まったのだけれど。
その成果はといえば……
「ぜんっぜんダメね」
テーブルに並んだ料理の失敗作……というよりも食材の残骸を眺めて郁乃は一言。
「いや……そこまで言わんでも」
しかし、正直なところ内心では俺の意見は郁乃とまったく同じだった。
それもシルファの上達が遅いとか、そういうレベルの問題ではないのだ。
「だいたい、メイドロボにかかる費用的負担を考えれば、高級ホテルの食事を毎日食べることも余裕なのれす。
それなのにメイドロボに料理を作らせるなんて、経済的にはとてつもなく無駄なことなのれす。
こんなことをする意味が、シルファにはまったく分からないのれす」
「は、はあ……」
さっきからのシルファはこんなことばかり言って、やる気というものがまったく感じられない。
愛佳は困り顔でシルファの言葉にいちいち相槌をうつばかり。
おかげで料理の練習は全然進まない。
「もう、いいのれす。
シルファには先生は必要ないことが、よく分かったのれす
これ以上、無関係なお姉さんと郁乃に迷惑を掛けるのは筋違いというものれす」
そう言ってついに練習まで放り出してしまった。
キッチンを飛び出してしまうシルファ。
「お、おい。どこへ行くんだよ?」
「ちょっとパソコンをお借りしますれす」
イルファに続いて俺達が向かったのは二階の俺の部屋。
パソコンのスイッチを入れ、ネットプラウザからメイドロボ関連の総合サイトを呼び出した。
「来栖川データベースにアクセスして、料理用アプリケーションをダウンロードするのれす。
費用は少しだけかかりますけれど、このまま材料を無駄使いして料理を作るよりも、ずっと安くあがるはずなのれす」
「いや、それはそうかもしれないが……」
「すぐにプロ並の料理も作れるようになりますから。
それが一番いい方法なのれす」
「うーん……」
なるほど、効率優先で考えればそういうことになるのだろう。
でも、それでいいんだろうか。
そんなことが目的であれば、珊瑚ちゃんは俺の家に彼女をここに送りつけたりはしなかったはずだ。
こんな形でこの問題を終わらせてしまっていいのか?
「ダメよ!」
俺の感情を強く代弁するかのように、隣で黙って見ていた郁乃が叫んだ。
「あんた、そんなやり方でいいと思ってるの?
赤の他人がここまで付き合ってあげたっていうのに、あっさり逃避してどうすんのよ!」
「逃避……れすか?」
「そうよ! そういう諦め方は、せめてやるべきことをやってからの話でしょ。
まだあんたはなんにもやってないじゃない」
「どうして……郁乃は怒っているのれすか?
シルファには、わからないのれす」
シルファは心底不思議そうな顔で呟く。
「ど、どうしてって……」
「郁乃はシルファに関わるのが面倒なのでしょう?
シルファは、愛佳も郁乃も楽になれる提案をしただけなのれす。
それのどこがいけなかったのでしょうか?」
「そ、そりゃそうだけど……で、でも、あんたねえ……」
郁乃が気圧されたように黙り込む。
それはシルファの嫌味に引いたのではない。
シルファの言葉にはそんな感情はまったく無かったのだ。
愛佳も俺も、そんなイルファになんと言えばいいのか全く分からない。
「……みんな、ちょっと休憩しよう。話はそれからだ」
「そうね……」
シルファを除けば、自分も含めて熱くなっていた。
その熱をまず冷ます必要がある。
「シルファも。
まだ料理レシピのダウンロードはしないでくれ。
これからのことは、みんなで話し合ってから決めよう。いいね?」
「は、はいなのれす。
みなさんがそれでいいというのなら、シルファはそれで構わないのれす」
「シルファもどっかで好きに休んでてくれ。またあとでな」
「はい……」
8 :
箱入り娘が届いたら6
2008/02/29(金) 02:27:21 ID:ai2IZ9fw
釈然としない気持ちを抱えたまま、俺達は部屋を引き上げていく。
シルファを二階の俺の部屋へと残し、愛佳と郁乃と俺とは1階のリビングで話し合うことにした。
愛佳がいれてくれた紅茶のカップを手にしてとりあえず一息。
「あの、料理を教えるの上手くいかなくてごめんなさい……」
いくぶん疲労のこもった声で愛佳が謝っている。
でも、もちろん愛佳に責任なんてない。
「いや、愛佳が謝ることなんてないから」
短い時間でかなり疲労した様子の愛佳を励ましつつも……
実際俺も疲れたな。ほとんど何もやってないのに、シルファたちを見守っているだけでも妙に疲れたよ……
「言っとくけど、上手くいかないのは姉のせいじゃないからね」
「分かってるよ。愛佳はよくやってくれてる」
「貴明には悪いけど……あの子に何を教えても無駄なんじゃないの?
本人にやる気が無いんじゃどうにもならないわよ」
「でも……」
郁乃の指摘に反論できる言葉が俺にはない。
ないんだけど、でも……
それでもまだ諦めたくないと思える自分の感情は、何処からくるものなんだろうか。
「納得いかないって、顔してるわね。結局、あんたはどうしたいのよ?」
「うん、上手く言えないんだけどさ……」
シルファのことを諦めきれない理由。
言葉に出来ない俺の気持ちを、それでも説明し始めようとしたその時。
「……しく……」
と、俺の耳に微かに誰かの声が聞こえたような気がした。
「あれ、今なにか聞こえなかった?」
「ん、誰かの泣き声みたいな……」
「ああ。俺にも聞こえた」
どうやら愛佳も俺と同じ声を聞いたようだ。
耳を澄ますと、すすり泣くような微かな泣き声は玄関の方から聞こえてくるようだ。
ここに居る愛佳と郁乃を除いて、この家に居る人物はあとひとり。
つまりこの泣き声の持ち主は、
「行ってみよう……静かにな?」
「うん……」
三人で連なってしのび足。
1階廊下の先。
玄関の手前で先導する愛佳が足を止める。
(そこに居る?)
(うん)
廊下の角からこっそりと覗き込むと、そこに思った通りの少女の姿。
玄関先でうずくまって、彼女はあのダンボールを抱きしめていた。
ダンボールの箱に隅っこには黒のサインペンで
”しるふぁのいえ”
と書かれている。
「あれがあの子の家?? なんであの子はダンボールを抱いてるわけ? 貴明、あんたには理由が分かるの?」
「いや、はっきりとは分からんけど……
でも、昨日の夜もシルファは俺が用意した客間には泊まらないで、あのダンボールの中に引き篭もってたな」
「そうだったの? でもどうしてなんだろう?」
そんなとこで寝たら風邪ひいちゃいそうだね……と、的はずれな心配をする愛佳。
話がずれるから姉は口挟まないで、と瞳で睨みつける郁乃。
「俺の想像でしかないけど。
シルファはこのダンボールに包まれてこの家に送られてきたんだよ。だから……」
そしてきっとシルファをあのダンボールに包み込んだのは、イルファさんやミルファの仕事なのだろう。
或いは珊瑚ちゃんか、瑠璃ちゃんなのかもしれない。
だから、あのダンボールは今のシルファにとってたった一つの”家”なのだろう。
「珊瑚さま……シルファお姉さま……どうして、シルファのことを捨ててしまったのれすか……?
きっと、きっとシルファが無能だから……見捨てられてしまったのれすか……?」
そして、シルファの本当に帰りたい家は……
「くすん……お家に帰りたいのです。珊瑚さまのお側に戻りたいのです……」
「あたし、シルファがなんでやる気無いのか分かった気がする」
ダンボールにしがみついて泣いているシルファの背中を見つめながら、郁乃がぽつりと呟いた。
「シルファは、その珊瑚って人から捨てられたと思ってるんだね。
持ち主に捨てられて、『他所でしっかりやれ』って言われても、そりゃあ納得できないだろうし」
「そうだねえ……」
愛佳が合点した様子で頷く。
俺にもその分析は正しいのだろうと思えた。
シルファはご主人様が望むことなら頑張ると言ったけど、本心では見捨てられた気持ちで塞ぎ込んでいるのだろう。
「で、どうなの貴明。珊瑚っていう人は本当にあの子を捨てたの?」
振り返る郁乃が、いくぶん厳しさ含んだ瞳で問いかける。
俺はきっぱりと答えた。
「ちがうよ。珊瑚ちゃんはシルファを捨てたりなんか絶対にしない」
「そう。よかった」
そう聞いて郁乃の表情が和らいだ。
なんだ。一応シルファのことも心配してくれてるんだな。
と次の瞬間、俺の感情を察したかのように郁乃はそっぽを向いた。
まったく、なんでこいつはこうも素直じゃないのだろう。
「自分が捨てられたわけじゃないって……この特訓にもちゃんと意味があるんだって、まずシルファさんに分かって貰わないといけないよね」
「そうだな」
愛佳の意見に俺は頷いた。
きっと、それが一番大切なことだ。
「でもそう簡単に納得出来ることじゃないかもね。あの子、顔に似合わず結構頑固そうだし」
「どんな話をしたら、そのことを分かってくれるのかな?」
「どうなの、貴明。あんたはあの子の気持ちを動かす言葉を持ってる?」
「……」
それはもちろん……
「そんな言葉、持っているはずがない」
「そうよね」
俺はそんなに器用じゃない。
いや、人間はそんなに器用じゃあない。
「でもほっとけないんだ」
女の子が苦手なくせに、ほおっておけない。
だって、女の子が泣いたり、笑ったり。
悲しんだり喜んだり、そんな顔を見るだけで心が落ち着かなくなってしまう。
もう俺はそういう人間なのだろう。
それとも、放っておけないからから、かえって女の子が苦手になってしまうのかもな。
案外そんなものかもしれない。
女の子と深く関わらなければ、後で困ることもない。
涙をみたり、悩みを知ったりしたらもう捨てておけなくなるから、その前に逃げ出してしまうのだ。
「でももう遅いよな……」
もう十分過ぎるほど俺はあの女の子と関わってしまった。
なにしろいきなりダンボール詰めで送られてきてしまったのだから。
なにも知らずに箱を開いたら、いきなり彼女は泣き出した。
だから逃げる暇なんてなかった。
最初から逃げることなんて出来なかったのだ。
だったら、もうやるしかないだろう。
「俺、イルファと話してくるよ」
「うん、頑張ってね、貴明くん」
「しっかりやんなさいよ」
9 :
箱入り娘が届いたら7
2008/02/29(金) 02:28:03 ID:ai2IZ9fw
俺はこっそり隠れていたことを気付かれないように、
なるべく自然な感じを装ってシルファの背中に近づいた。
「シルファ、今いいか?」
「あっ……貴明さん……な、なんれすか?」
しがみついていたダンボールを慌てて背中に隠して。
シルファは俺の方に向き直った。
「あの、もう休憩は終わりですか。みなさんのお話はまとまったのれすか?」
「まあそうだね」
いったい話をどう切り出していいものか。
俺は迷った末、当たり障りの無いことから聞いてみることにした。
「なあ、シルファは……料理が上手になったらまず誰に食べてもらいたい?」
「料理……ですか??」
シルファは何故か不思議そうな顔。
「やっぱり珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんかな?」
「わたしは……」
それは俺にとって回答は半ば想像出来ていたはずの質問だった。
それなのに、シルファは少しばかり迷った表情を見せ……
「貴明さんに、一番に食べてもらおうかな……とも思うのれす」
「えええ???」
「もし貴明さまが満足するくらい料理が上手になれたら……わたしをお側に置いてくださいませんか??」
「いや……それはその……」
それは想いも寄らなかった答え。
「貴明さんが誘拐したくなるくらいシルファのことが欲しいなら……
シルファのご主人様が貴明さまでも別にいいのれす」
「いや、誘拐してないって言ってるじゃないか」
……というか、そういうボケをかましてる場合じゃないし。
「ちょっと待ってよ。君は料理の特訓を頑張って、珊瑚ちゃんのところに戻るんじゃないのか?」
「でも……珊瑚さまは、シルファのことを見捨ててしまったのかもしれません」
シルファは寂しそうにそう呟いた。
やっぱりこの子はそう思っていたのか。
「きっと、シルファよりも大切なものが出来たのれす。シルファのことなんて、もう必要なくなってしまったのです」
「もしそれが本当だとしても、シルファはそれでいいのか?」
「それは……仕方の無いことなのれす。
珊瑚さまがシルファより楽しく過ごせるおともだちが出来て……
それでシルファがいらなくなったというのなら。
シルファに出来ることは、出来る限り珊瑚さまのじゃまにならないように努力することだけれす……
だからもう、新しい居場所を見つけるしかないのれす」
シルファはいつのまにか微笑んでる。
それはなぜか見覚えのある笑顔だった。
「今日からは、シルファは貴明さんをご主人さまだと思って頑張ります。
だからシルファをよろしくお願いしますね」
「その笑顔は、シルファの笑顔じゃないね」
「え……」
「その笑顔、今朝も見せてくれた笑顔だったね。
俺に宜しくって言ってくれたときにも笑っていたけど。
その時の笑顔と、今の笑顔は同じだ……すごく綺麗だけどさ、本当のシルファの素顔じゃないんだよね?」
シルファは俺の言葉にとても驚いた顔。
彼女の大きな瞳がいっぱいに広がっている。
「分かるのれすか?」
「まあね」
「わたしもメイドロボの端くれれすから……接客用の基本動作プログラムくらいは標準装備しているのれす
そっきのは、去年の『メイドロボ笑顔コンテスト』で優勝した実績のある笑顔モーションだったんですけど……
貴明さんは満足されなかったのれすか?」
「コンテストねえ……」
あの笑顔がどこか不自然に見えてしまったのはそういうわけか。
「笑顔の違いが分かるなんて、貴明さまはそうとうなメイドロボマニアれすねえ」
「違うって」
雄二じゃあるまいし。俺にはそんな違いは分からない。
「綺麗だと思ったよ。でもシルファの笑顔じゃないってことだけは分かるよ」
「そうれすか……」
「やっぱり、本心から笑えているはずもないよね?」
「……」
自分の口から、『違う』とは言えないのだろう。
俺には分からないけど、これがメイドロボの忠義なのだろうか?
いや、なんとなく違うように思う。
シルファがメイドロボだから、じゃなくて珊瑚ちゃんへの想い方だろうな。
「ねえ、シルファ。珊瑚ちゃんは、君のことを捨てたりなんかしないよ。それはシルファだって分かっているはずだよ」
「……珊瑚さまはお優しいから、シルファを捨てたりはしないかもしれません。
でも、シルファが珊瑚さまの重荷になってしまうのなら、それは同じことなのれす」
「重荷だなんて」
「いえ……」
シルファの手には、今朝俺が見せた珊瑚ちゃんとみんなの写真があった。
どうやらシルファはこの写真をずっと持っていたらしい。
「珊瑚さま、新しいお友達がいっぱい出来て。とっても楽しそうなのれす。
でも……その笑顔が、シルファには遠いのれす」
そして、その横顔に浮かび上がる感情がいまならはっきり分かる。
シルファは、寂しいんだ。
「わたしだけが、珊瑚さまのお友達になれると、そう思っていたのれす。
そして珊瑚さまのお友達も、わたしだけだと思っていたのれす。
珊瑚さまは、今でもシルファのことをとっても大切にしてくれます。
でも、この笑顔はシルファと二人きりのときとは違う……眩しい笑顔なのれす。
シルファはこんな珊瑚さまを今日まで知らなかったのれす……」
写真の中には、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが。イルファさんとミルファが。
雄二とタマ姉が仲良く写っていた。
でも、その中にシルファはいない。
「あの……やっぱり、珊瑚さまはシルファから離れてしまっているように……そう思えるのれす。
違いますか? 貴明さん」
「うん……」
ある意味で、シルファの言っていることは的を得ているように思う。
珊瑚ちゃんは新しい人間関係に足を踏み出そうとしている。
でも、シルファはその歩みに全くついていくことが出来ないでいるのだ。
だから、二人の距離は相対的に以前より広がってしまっていると言える。
もしかして珊瑚ちゃんはこのことを……
そう思ったとき、俺の頭の中に不意にひらめくものがあった。
「シルファ。君に見てもらいたいものがあるんだ。一緒に二階に行こう」
「は、はい? わっ、何をするのれす???」
戸惑うシルファの手を強引にとって、俺は彼女を二階の自室に引っ張っていく。
10 :
箱入り娘が届いたら8
2008/02/29(金) 02:29:33 ID:ai2IZ9fw
「さあ。これを見てくれ」
「これは……アルバムですね。まだ比較的新しいものれす」
「このアルバムは、珊瑚ちゃんたちと出会った頃からのものだよ。
他の写真も写ってるけどな」
「そうなのれすか……でも、どうしてこのアルバムをシルファに?」
「珊瑚ちゃんに新しい友達がいっぱい増えたって言ったよね?
その通りだよ。そしてこのアルバムにはその歴史が納められている。
どんな風に珊瑚ちゃんがみんなと出会っていったか。
シルファには知って欲しい」
「……どうしてなのれす?」
「それは見れば分かると思うよ」
「んー、そういう意味深な言い方はやめてほしいのれすけど……」
シルファは少し迷ったように手を伸ばす。
まるで腫れ物に触るみたいに、アルバムの上をその小さな手がさまよう。
興味はあるけど、でも怖い……そんな感じ。
「……いいのです。それでは見てみるのれす」
でも、少しばかりの迷いの後でシルファははっきりとそう言った。
「よし、じゃあ始めるか。
えと、俺が珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんと会ったのは……この辺だな」
俺はアルバムをめくって目的の写真を探り出す。
「まずこれだ。まだ珊瑚ちゃんと俺が出会ってから間もない頃の写真だよ」
「へえ……ずっと昔の珊瑚さまたちなのれすか……」
シルファが興味深げに覗き込む。
珊瑚ちゃんたちの過去の姿、やっぱりシルファにとって気になることなんだろう。
アルバムを熱心に見つめるシルファのまなざしは子供のように純粋な輝きが感じられて、
ふと俺は微笑ましい気持ちになった。
「んー、なんだか瑠璃さまが怒ってるみたいれすね」
「そうだな。この頃、俺は瑠璃ちゃんには蹴っ飛ばされてばかりだった」
「瑠璃さまが? 貴明さまを蹴っ飛ばすのれすか??」
「そうれすか……そんな瑠璃さまを、シルファは見たことなかったのれす……」
いや、そんなとこに興味を持たなくていいから。
「……それは見なくていい。じゃあ次な」
アルバムのページをめくり、また次の写真へ。
「あっ。この写真にはイルファお姉さまがいるのれす」
「うん。俺たちがイルファさんと出会った頃の写真だな」
「シルファの気のせいでしょうか……なんだかみなさん難しいお顔をしているのれす……」
「気のせいじゃないよ。初めて会ったとき、俺達は仲良しじゃなかったんだ」
この後すぐ、イルファさんが研究所に帰るって言い出したんだよな。
もしあのまま何もせずにいたら、どうなっていたことか。
きっと今のような関係を続けていくことは出来なかっただろう。
「お姉さま……瑠璃さまと喧嘩でもなされたのでしょうか?
瑠璃さまはイルファ姉さまをよく怒りますけど……でも、イルファ姉さまのこんな暗いお顔を見たのは初めてなのれす……」
「いろいろなことがあったんだ。いつかきっと、シルファにも話すよ」
「はい……」
さらにページをめくる。
この写真は、確かイルファさんのロケテストだっけか。
「この写真には、貴明さまは写ってらっしゃらないのれすね。
イルファ姉さまと、さっきの男の人と、女の方と……」
「この写真は雄二から貰ったものだよ。
以前、イルファさんが雄二の家にロケテストの為に滞在したことがあったんだ。
イルファさんとタマ姉はこの時初めて知り合ったんだよ」
もちろんタマ姉家でのことだから、俺には聞いた話でしかないけど。
なんでも『美人メイドロボと一つ屋根の下』というシチュエーションに暴走した雄二がイルファさん盗撮を狙ってなんども失敗したとか。
そのおかげでタマ姉とイルファさんは打ち解けたらしいから、怪我の功名というべきなのかな……?
いや、やっぱり雄二は許せないな。
よりにもよってイルファさんのお風呂姿をカメラに収めようとするなんて。
絶対に許しがたい。
「その時にタマ姉がイルファさんのこと気に入ったらしくて。
ほら、タマ姉は強引だからさ。
いつも俺や雄二を引っ張っていって、皆で野球をやったり旅行に出かけたりするんだけど、
その中にイルファさんも加わるようになって……そこから珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんも少しづつ巻き込まれていったんだ」
「そうなのれすか……イルファ姉さまは、やっぱりすごいのれす」
「そうだね」
俺は頷いてまたページをめくる。
「そして、これが一番新しい写真だな」
「あっ、この写真にはミルファ姉さまがいるのれす。
しかも、また見たことも無い方がいっぱい写っているのれす……」
「このちっこいのがこのみ。
その隣にいるのがちゃるとよっちだよ」
「ふえええ……写真に収まりきらないくらいに人がいっぱいなのれす……
どうしてこんなにいっぱいの人が出てくるのれしょうか……??」
少々混乱した様子のシルファだった。
写真の変化の早さにシルファはついていけないらしい。
「ミルファは突然俺の家におしかけてきたんだよ。あの時はほんとに驚いたよ」
「そういえば、ミルファ姉さまがお家をしばらく空けたことがあったのれす……
あの時、貴明さまのお家に行ってらしたのれすか?」
「きっとそうだろうな。
で、ミルファが俺の家に住んでることがこのみにバレちゃって。
なんだか知らないけどこのみも俺の家に住むとか言い出すんだよ。
しかもちゃるやよっちまで『このみの援軍だ』とかわけのわからんことを言い出して俺の家に泊まりに来るし。
あの時は大変だったよ」
「貴明さまって……」
「なに?」
「いえ。罪深いおとこの方って、やっぱり自覚がないものなんれすね……」
なにやら理解したような顔で頷くシルファ。
「でも……そのわりにはこの写真のお姉さまとこのみさんたちは、仲がよさげに見えるのれす」
シルファの言う通り、写真の中の少女達……
ミルファとこのみ。ちゃるとよっちはまるで女子高生同士がプリクラとか撮るみたいなバリバリの決めポーズで仲良く写真に収まっている。
そのばかばかしさはともかくとして、写真の彼女たちの仲の良さと騒々しさだけは見知らぬ人にも伝わるだろう。
そんな分かりやすい写真だった。
「なんでも戦いの中で女の友情が芽生えたらしい。俺にはさっぱりわからんが」
「そうれすかあ」
「なに? シルファは分かるの?」
「まあ一応。おんなのこには分かるんれすよ」
「ふーん……まあいいや。写真はこれで全部だよ」
11 :
箱入り娘が届いたら9
2008/02/29(金) 02:30:07 ID:ai2IZ9fw
俺はアルバムを閉じる。
閉じられたアルバムの表紙を見つめてなにやら物思いにふけるシルファに感想を求めた。
「シルファ、どうだった?
このアルバムを見て、何を感じた?」
「ええと……」
シルファは自分の考えを言葉にしようと戸惑っているみたいだった。
俺は答えを急がない。
「えっと……その……
シルファにとって驚きだったのは、多分……
イルファ姉さまやミルファ姉さまのお姿のことです。
珊瑚さまだけじゃなくて、イルファお姉さまやミルファお姉さままで。
こんなにも新しい方とお知り合いになって、仲良くしていらっしゃるなんて……全然知りませんでした」
「うん、その通りだね。
俺が話したいのも、そのことだよ」
「はい?」
「珊瑚ちゃんには君の知るように沢山の新しい友達が出来たけど。
そのきっかけになってくれたのは、イルファさんやミルファなんだ。
二人が外の世界で色々な人と出会って、珊瑚ちゃんと知り合うきっかけを作ってくれたんじゃないかな」
「確かに……そうかもしれないのれす」
シルファは考え込むように呟き、そして不意に何かに気が付いたように顔を上げた。
「では、珊瑚さまはシルファにも姉さまたちのようになって欲しいと望んでいるのれしょうか?
それでシルファを貴明さんのお家に?」
「うーん、そこまで珊瑚ちゃんが計算してるかどうなのかは微妙なとこではあるけど……」
珊瑚ちゃんの行動が天然なのか計算なのかはよく分からないところがある。
それについては考えるだけ無駄かもしれない。
「でも、シルファに新しい友達が出来たら、珊瑚ちゃんはきっと喜んでくれると思うよ。
せっかくこうして外に出てきたんだし。
シルファもいろんな人と出会って、友達を作るといいよ」
俺の言葉に、しかしシルファの表情は微妙に固くなる。
「珊瑚さまの望むことなら叶えたいとは思うのれすけど……
でも、そんなことシルファにはできそうにないのれす」
「どうして?」
「友達って、どうしたら出来るのれしょうか? シルファには全然分からないのれす……」
「別に……普通に一緒に遊んだりとか……なんか適当に考えればいいよ」
「適当にって? そんなこと急に言われても、シルファにはなんにも思いつかないのれす」
「まあ……そうかなあ……」
ずっと家に閉じこもりきりだった少女にしてみれば、それは難しいことなのだろうか。
俺にはぴんとこないなあ。
でもそうか、俺にもこのみやタマ姉や雄二が居なかったら。
全然知らない人ばかりの場所で、いきなりなにかを始めるっていうのは案外難しいのかもしれないな。
そう考えれば、確かにイルファさんやミルファはずいぶん頑張ったのだろう。
「お姉さまたちは、とてもすごいのれす。
シルファに同じことが出来るとは思えないのれす。
シルファには……お姉さまたちのことさえ、遠く見えてきたのれす……」
「確かに、イルファさんもミルファもすごくいい娘だからな」
でも、シルファだっていい娘だと思うけどな。
それにシルファは二人の妹じゃないか。
「遠くなんかないよ。大丈夫。シルファにだって同じことがきっと出来るよ」
「そんな……どうしてなのれす?」
「だって、シルファはイルファさんたちと同じ、珊瑚ちゃんが作ってくれたメイドロボじゃないか」
「メイドロボだから……?」
「知ってるかい? 珊瑚ちゃんは、自分や瑠璃ちゃんと一緒に遊んでくれる友達が欲しくてメイドロボを作ったんだ。
「それは、聞いたことがありますけど……」
イルファさんはともかく、ミルファの方はちょっとばかり常識に欠けるところがあったんだけどなあ。
でも俺の心配なんて杞憂だった。
ミルファはすぐに人と打ち解けられる明るくて素直な性格の持ち主だった。
珊瑚ちゃんも、イルファさんもミルファもすごくいい娘だから。
「珊瑚ちゃんは、大切な想いを込めて一生懸命シルファたちを作ってくれたんだ。
だからその願いはきっと届くよ。シルファは珊瑚ちゃんの夢なんだ」
「わたしが珊瑚さまの夢……」
俺の言葉をオウム返しに呟くと、シルファは真っ赤になって俯いてしまう。
いや……照れないでくれ。こっちも恥ずかしくなるから。
「た、貴明さまって、恥ずかしいことを平気でおっしゃるのれす……」
「へ、平気じゃないけどな」
「でも、そうなれたらいいと思うのれす……
いえ。そうなりたいと思うのれす」
そう言って『うん』と頷いてくれたシルファの顔にはさっきよりずっと前向きな顔をしていた。
「貴明さんは……不思議なことをおっしゃるのれす……
なんだか貴明さんに励ましてもらうと、ちょっとだけ信じたい気持ちになれるのれす」
「そ、そうかな?」
シルファが尊敬するような真っ直ぐな瞳で俺を見つめている。
純粋で輝いた瞳に見つめられると、なんだか照れる……
「瑠璃さまが、『男っていうのは優しい言葉で女の子をだまして、てごめするんやでーー』って、言ってました」
その言葉の意味がやっと分かったような気がします」
「…………」
そんな理解のされ方は望んでなかったけどな……
純粋さにゆえの棘というかなんというか。
シルファは意外と油断できない性格だな。
「でも……わたしはまずなにをしたらいいのれしょうか……?」
「そうだね、初めてだとなかなか勝手が分からないものだよね」
シルファの顔にはまだまだ戸惑いと不安の色が浮かんでいた。
でも、随分前向きになってくれたよな。
あとは、この子にはほんのちょっとしたきっかけがあればいいだけだ。
「じゃあ……まずは俺と友達になろうか」
「え?」
俺はシルファの目の前に右手を差し出した。
「うん。俺とシルファは、今日から友達だ」
「そんな……どうしてなのれす??」
「昨日、今日とシルファと一緒に過ごして、
シルファが珊瑚ちゃんを大切に思う優しい気持ち、ちゃんと伝わったよ。
だから、俺は君と友達になりたい。珊瑚ちゃんは俺にとっても大切な人だから。
二人で珊瑚ちゃんの夢を叶えていこう」
「んー。貴明さんだと、何か下心がありそうで怖いのれすけど……」
言う言う。
大人しいだけの子かと思ったけれど、これだけ言えるなら誰が相手でも大丈夫そうだけどな。
と、シルファの小さな手が俺の前に差し出される。
「シルファと握手、するんじゃないのれすか?」
「ああ、そうだね」
俺はそっとシルファの手をとった。
もみじみたいに可愛らしい小さな手だった。
「シルファが生まれたとき……珊瑚さまも貴明さんと同じように手を差し伸べてくださったのれす……
あのときのことは、シルファはいつまでも忘れません」
そしてシルファは俺の手を見つめて言った。
「貴明さんの手はやたらと大きいのれす。
こうして握ると、でっかくて、ちょっとだけおっかないのれす。
でも、珊瑚さまの手と同じように暖かいのれす」
「タマ姉も、雄二も。このみもちゃるもよっちも。
それに愛佳も郁乃の手も、みんな同じだよ」
「そうなのれしょうか?」
「うん。愛佳はね、困ってる人がいるとほっとけない優しい女の子なんだ。
だからみんなの委員長に選ばれて、信頼されている。
郁乃は……気難しいところがあるけど、悪い奴じゃないよ
これから二人と一緒に料理を作ってみよう。
そうすればシルファもきっと二人と友達になれるよ」
「……貴明さんは、お二人のことがお好きなんれすね」
「す、好きっていうか……まあね、うん」
す、ストレートな聞き方だなあ。
もちろん、好きではあるけど、そんな聞かれ方するのは恥ずかしい。
「貴明さんは男らしくて、女ったらしなのれす。
女の子はみんな好きなのれす。よく分かったのれす」
……もう別にそれでもいいか。
「シルファのことも好きだからね」
「はいなのれす。だったらちょっとだけ、口説かれてあげるのれす」
12 :
箱入り娘が届いたら11
2008/02/29(金) 02:30:36 ID:ai2IZ9fw
そんなシルファをともなって1階に戻ると、
階段下のリビングでくつろいでいた二人が驚いたように声をかけてきた。
「わ、貴明くん……
シルファさんと手を繋いでるの? ど、どうして?」
あ、そういえばあれから手を繋いだままだったっけ
「いや、深い意味はなく、ただ友達に……」
「シルファは貴明さんに口説かれたのれす。一緒に夢をかなえてくれるんだそうれす」
「「えっ」」
シルファの余計な言葉に、姉妹二人の驚きの声が重なる。
「い、いや……俺は確かにそう言ったけどさ。でも」
「あんたって、相変わらず手が早いわね……」
「た、貴明くんって……」
「違うって! シルファもヘンな部分だけ抜粋するなよ」
まったくシルファと郁乃には困ったものだ。
この娘たち、可愛い顔してなかなか言葉は危険なんだよな。
でもこの空気は騒がしくてにぎやかで。
さっきよりはずっと明るい雰囲気になれたみたいで……だからまあいいとするかな。
そう思っていると、俺の隣に立つシルファが急に真面目な顔になって口を開いた。
「あの……愛佳さん、郁乃さん。
わがままを言って、ごめんなさいなのれす。
でも、もう一度頑張りたいと思うのです。
シルファにいろいろなことを教えてくださいなのです」
いまだ俺の手を握ったままのシルファの小さな手から、汗ばんだ緊張が感じられた。
内気なシルファにとって、こんな簡単な言葉でもきっと大きな勇気を必要としたのだろう。
「もちろんですよぉ。私に分かることだったら、なんでも教えるからね」
「……ま、いいけど。今度こそ真面目にやりなさいよね」
「はい! ありがとう、なのれす!」
そしてキッチンの中での静かな戦いが再び始まる。
まだまだ不器用に動くシルファの手に、愛佳の優しいアドバイスと郁乃の容赦ない指摘が飛び交う。
苦闘の結果、いくつかの手料理がテーブルに並んだ。
俺も味見にだけは参加させてもらった。
「ん……さっきのに比べれば遥かにマシだけど……はっきり言って、まだまだね」
シルファの作った鳥のから揚げ……らしき料理を郁乃はそう厳しく評価した。
「そ、そうなのれすか……」
「おまえな、そこまで言わなくても」
「仕方ないでしょ。ちゃんと評価しなきゃ、上達だってありえないし」
まあ、そうかもしれないが……
言いにくいことをはっきり言う奴だな。
シルファも少しばかり落ち込んでいるようだ。
「でも初めて作ったのならこれで上出来だよ。
ひとつづつ練習していけば、きっとすぐに上達するさ」
「うん、あたしもそう思います。シルファちゃん、短い時間ですごく上手になったと思う」
俺の励ましに、愛佳もフォローをいれてくれる。
「は、はい……」
気を取り直して一休みしたらもう一度始めようか、と提案しようとしたその時だった。
「でも、このお味噌汁の味はあたし好きかな……」
「え?」
シルファがいくつか挑戦した料理が並ぶそのうち、
味噌汁の茶碗を手にした郁乃がなんとはなしにそう呟いた。
あの味噌汁、ちょっと薄味で俺には正直合わなかったけどな。
郁乃にしては珍しく気を使ったのだろうかと不思議に思った。
(郁乃は味噌汁、やたらと薄味が好みだから)
(なるほど)
俺の疑問に答えるようにそっと愛佳が耳打ちする。
どうやらこの意見は単純に好みの問題によるもののようだ。
でも、シルファにとってはそんな些細なことではなかったようだ。
「ほ、本当れすか?
お世辞じやなくて、郁乃は本当に美味しいと思っていただけたのれしょうか?」
「え? まあ、別に嘘は言わないけど……?」
「正直に、言ってくれたのれすか?」
「だ、だからそう言ってるじゃない」
妙に真剣なシルファの問いかけに、少々気圧されながら答える郁乃。
と、シルファの瞳から大粒の涙がこぼれ出した。
「わっ、な、なによ……なにも泣かなくてもいいじゃない。あたしはそんなおおげさなことを言ったわけじゃなくて……ただ……」
「生まれて初めて、自分が頑張って作ったもので、だれかを喜ばせることができたのれす。
それが、こんなに嬉しい気持ちになれることだなんて……
シルファは全然知らなかったのれす……」
「ちょっと……泣かないでよ。恥ずかしいな……」
その光景を見て俺は思う。
やっぱり、シルファは分かってくれたんだな。
イルファさんやミルファの妹なら、その気持ちをきっと分かってくれると願っていた。
「ありがとうなのです……すごく、すごく嬉しいのれす!
シルファは郁乃が大好きなのれすっ!」
そしてシルファの顔に浮かぶのは俺が見る初めての本当の笑顔。
シルファは隣に座る郁乃におもいっきり抱きついた。
その勢いに押されてたじろぐ郁乃。
「ちょ、ちょっと、抱きつかないでよ。恥ずかしいなあ……もう……」
「いい友達が出来てよかったね、郁乃」
「そ、そんなんじゃないって……あ、ちょっと! 写真なんか取らないでよ! 貴明の馬鹿ーー!!」
俺は初めて見るシルファの本当の笑顔を、郁乃の困り顔と共にカメラに収めた。
それは涙混じりのぼろぼろの笑顔だったけど。
その笑顔は無性に眩しくて、何故だか俺の胸を熱くさせるのだった。
きっと、今、俺達とシルファの間にはなにかが芽生えた。
それは珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんがイルファさんとミルファに貰ったものと同じだろう。
きっとそうであって欲しいと思う。
姫百合家のリビングでゲームをしていた珊瑚の携帯端末がメールの到着音を知らせている。
着メロは何故か『悪魔の黙示録』。
「ん、シルファからのメールや」
「ほんま?」
携帯端末を操作する珊瑚から笑みがこぼれる。
メッセージは元気なシルファの様子を率直に伝える内容だった。
『珊瑚さま、お元気れすか?
シルファは貴明さんのお家でとても元気に料理の特訓に励んでいます。
お料理もお掃除も、まだまだシルファには難しいけれど。
一生懸命頑張って誰かに喜んでもらえることは、とってもとっても嬉しいことなのれす。
まだまだシルファは頑張って、貴明にも、愛佳さんにも、そして郁乃にも。
もっともっと喜んでもらえる料理を作れるようになるのれす』
メールに添えられた写真には、貴明と、愛佳と郁乃。そしてシルファの姿があった。
郁乃の腕を強引に取って並び写真に写るシルファは笑っていた。
その笑顔は珊瑚が初めて目にするシルファの眩しい笑顔だった。
:追伸
玉子焼きを、ちょっとだけ上手に焼けるようになったのれす。
帰ったら、珊瑚さまやみんなにもきっと食べて欲しいのれす。
きっとれすよ。
13 :
名無しさん@chs
2008/02/29(金) 02:32:16 ID:ai2IZ9fw
以上になります。
それにしてもこうして投稿してみると長い……
下のタグ『全部見る』を使わないと読みづらいと思います。
もし読んで下さったかたがいましたら感謝です。
14 :
名無しさん@chs
2008/02/29(金) 06:13:15 ID:Jb+PX3Hc
乙。
15 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(1/11)
2008/08/03(日) 22:13:47 ID:TIe3lI9U
――― 話は、数日前に遡る。 ―――
「長瀬室長、お客様がお見えです。」
最近は、匿名ながら国営放送のドキュメンタリー番組にまで登場するグループ内のちょっとした有名人になってしまった長瀬
を呼ぶのに、敬称選びに苦労する受付嬢。
役職はロボット研究所次長とHM開発室長兼務、研究員としての資格は主任一級、給与体系上では参事。
結局は、一番通称となっている役職名を選んだ。
「ちょっと、立て込んでるんだが・・・・どなたかな?」
「長瀬由真さん、とおっしゃるお嬢さんです。」
ああ・・・・ついに、おいでなすったか。
苦笑いを浮かべて、頭をボリボリと掻いた。流石に、放置しておく訳にも、いくまい・・・・。
「東吾君、ちょっと頼むよ。」
HM−17の動力パラメータ調整を東吾に引き継いで、開発室を後にする長瀬源五郎。
東吾はその背中を見やり、クックック、と笑いを噛み殺していた。
応接間のソファにちょこんと座る、セーラー服に黒ブチ眼鏡の由真。
「粗茶れす。」 ―― 由真の目の前のテーブル上に、お茶汲みリオンがコトリとお茶を置く。
やがて現れた源五郎を見て、由真は、おのずと表情に現れそうになる憤怒を、なんとか押さえ込もうとした。
“・・・・出たわねぇ〜、ロボットで日本征服を企む悪の科学者っ! ――― と、我慢我慢。あたしは来栖川会長の執事の孫娘。
挨拶は大事よね。”
「こんにちは、源五郎おじさん。」
「やぁ、こんにちは由真ちゃん。源三さんはお元気かな?」
「お陰さまで」
「いつぞやは悪かったね。代わりのマウンテンバイクの調子はどうだい?」
「なんでおじさんが謝るの?あれ壊したの、河野貴明のバカだし。」
「いや、まぁ・・・・あれは、彼がうちのメイドロボの為に、無理してくれた事でもあるんでね。」
16 :
いわゆる普通のメイドロボ いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(2/11)
2008/08/03(日) 22:17:19 ID:TIe3lI9U
「ふーん。―― ま、前のより高いのだし、悪くはないよ。 ――― でも、気に入ってたんだけどね、前の。折角おじいちゃんが
買ってくれたもんだったのに」
「申し訳ない。」
「メイドロボの開発予算もポンと決済出来るおじさんだし、ホントは大した支出とか思ってないんじゃない?――ねぇ、メイドロボ
の試作機の値段って、どれくらいするの?瑠璃ちゃんのお付のアレとか、河野貴明にベタベタくっついてるのみたいなの」
「売り物じゃないからまともに見積った事はないんだけどね、多分、世界ラリー選手権のワークスマシン位の値段かなぁ。」
―― 予算計画はそれくらいでも、実際にかかったコストは、特にやんちゃなミルファともなると、豊胸部品だの補強パーツだの、
もう見当もつかない。
シルファとミルファが大喧嘩して室内調度品壊しまくった時などは、顛末書に添えられた補修代が、恐ろしい数字になったもの
だった ――― 一応、アレも最終的には開発コストの一部として計上されたが。
「へぇ・・・・それってどのくらい高いのか、実のところ全然想像もつかないんだけどさ。」
そして、ハァーッ・・・・と、深呼吸してから、由真が言った。
「じゃあ、向坂雄二の専属とかいう、あのメイドロボは、いくら位すんのよ。」
「―― あぁ、アレね。一般販売機のカスタマイズだから、ちょっと高いRVくらいかな。」
努めてにこやかな表情を装おうとする源五郎だが、僅かに、口元が引きつるのが見て取れる。
「なんかね・・・・あたしにそっくりなんだけど ――― それはもう、気持ち悪い位に。」
そう言ってから、由真の眉が吊り上り、眼鏡の奥の彼女の目が、源五郎をジロリと睨みつけた。
「あたしにそっくりなロボが、青色1号だの桃色2号とかより安いってのは、腹に据えかねるわね。 ―― あたしの肖像権って、
どうなってんのよ?―― ううん、それ以前に、なんであたしにそっくりなわけっ!?」
17 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(3/11)
2008/08/03(日) 22:22:56 ID:TIe3lI9U
「それはね・・・・どんなオーナーからも好感を持って受け入れられるデザインを検討したら、偶然、ああなったんだよ。」
「ふーん。ま、有り得ない話ではないわね。よくある話とも思えないけど。」
「そうそう。僕も、出来上がったの見たら驚いた位でね。」
「―― 愛でてよし、食べてよし、ね?」
「―― 愛でてよし、食べてよし、さ。」
「メイドロボってさ、夜のお相手なんかも出来るんだよね?あんなのが世の中にいっぱい出回る事考えると、ぞっとするん
だけど?」
「いやいや、あれは検討用のデザインなんで、一体だけだよ。」
「―― 向坂雄二の相手してると考えるだけで、鳥肌立つのっ!!」
「あぁ、あぁ、偶然とは言え、それはすまない。ごめん。」
「9月終わりだか10月頭くらいに、おじさん、学校で見掛けたんだけど。まさか、これと関係あったんじゃないでしょうね?」
「そ、それは、ミルファの入学手続きに行った時じゃないかな、多分。」
「おじいちゃんに頼まれて、妙なテストみたいのやらされた事あったんだけど。執事の一級資格取得に必要とか、訳の
わかんない理由だったけどさ、あれどうみても、心理テストだよね。―― まさか、これも、関係あるんじゃないでしょうね?」
――― そう、それは大いに関係がある。壊したMTBの後始末に、源三に会いに行った直後の話で・・・・
“あの娘が、例の、ダニエル氏の孫娘とか?”
“そうだよ。大人しそうだが、あれでなかなか強情で、負けず嫌いなんだよねぇ。”
“面白いですな。『イブ』の実用テストには、従順な性格より、反発感じやすい性格類型の方がいいんですよ、感情抑制
プログラムの検証用には。何とかなりませんか?”―――
手を合わせて、由真にペコペコと頭を下げる源五郎。
「ごめん!由真ちゃん!人とロボットの明るい未来のために、どうか、協力してくれないかな!?いや、目をつぶってくれ
れば!」
「――― ふざけないでよっ!何それ!?よりによって、おじいちゃんまで巻き込んで!?――もう、 アレさっさと回収
しちゃってよ!恥ずかしいったらありゃしない!!」
18 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(4/11)
2008/08/03(日) 22:28:48 ID:TIe3lI9U
―― やれやれ、向坂の坊ちゃんも嫌われたもんだな。
私の目から見れば、いささか中性的で頼りない貴明君より、男前に感じるのだが・・・・
ふと気になった源五郎は、ロボット研が援助出資する“ヘタレ力研究所”を訪ねた。
男女の相性についての研究もここでは行われていたからだ。
「なぁ、こういう性格類型の女の子と、こんな感じの少年の相性って、どうよ?」
「う〜ん、あまり良好とは言えないわねぇ。というか、正直よろしくないんじゃないかしら。河野くんならどんな娘でも漢でも
かかってきなさいっ!なんですけどもね。うふ〜ん☆」 と、ゲイっぽいフレディ研究員。
―― カスタムリオンと、向坂少年の相性が少々心配になってきた。
「ふふふ、面白いですな。それでこそテストの意味があるってもんです。例え意に沿わない相手でも、万全のご奉仕、癒し
が提供出来るようでなければ、量産機への導入などおぼつきませんからな。」 とは、東吾主任。
東吾は頭は切れるがいささか独断専行の気が強く、今回の“イブ”のテストもいつも間にやら既成事実が先行して引っ張
られて来たような感があった。
そうこうするうち、今度は、ミルファが貴明に絶縁状を叩きつけたという知らせを受けた源五郎。
・・・・おいおい、ちょっとまて、はやまるな。ご主人様登録解除する?待て待てやけになっちゃいかん!
そうだイルファ、こうしよう。ほとぼりが冷めるまで、私をあの子のマスターに登録しておこう。どうせ、HMXのご主人様登録
なんぞ、大した意味はないさ。まったく、あの子は・・・・
毎度驚かしてくれるが、手間の掛かる子ほど可愛いというのもまた事実で・・・・・
土曜日だったが、来栖川ホールディングスの執行役員の要請があり、東吾に後を任せ、源五郎は急遽インド支社へ旅立
った。
19 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(5/11)
2008/08/03(日) 22:30:34 ID:TIe3lI9U
――― そして、再び日曜日。花瓶や鉢植を整頓している姫百合姉妹。
「貴明が持ってきた花、あらかた枯れてしもうたな」
「残っとるのは、コスモスくらいやなぁ〜」
「コスモスはたくましい花やもん」
「みっちゃんみたいやな〜」
「ん?」
「コスモスの花言葉は少女の純真、真心。この濃いピンクのは、“愛情”なんやて〜。それに、みっちゃんたくましいよ〜」
「貴明に逃げられまくっても記憶失っても、元気に立ち直ってるもんな。ホンマそんな感じかも」
「昨日まで、紫のコスモス咲いとった。花言葉は、“恋の終り”」
「そんなもん持ってくるから、振られるんや貴明」
「でも、もう枯れてしもうたな〜。もう大丈夫やろ〜。・・・・・実はな、さっき、いっちゃんから電話あったよ〜。」
「イルファ?何やて?」
「みっちゃん、貴明とこのみちゃん二人で出掛けたん聞いたら、ベソかいて探しに行ったそうや〜。」
「後悔するんなら始めからヤケにならんとけばええのに。ま、あの子らしいわ。」
20 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(6/11)
2008/08/03(日) 22:32:17 ID:TIe3lI9U
―― 珊瑚は、ミルファの前に、再び貴明が現れた日の事を思い起こす。
「貴明がぎょーさん花束抱えて来たのも、もう大昔の事みたいや〜」
「うん、いきなり平手打ちやもんな、いくらなんでも粗忽過ぎやミルファ。」
―― 突然、珊瑚はハッとして、鉢を動かす手を止めた。
「・・・・あれは、極端過ぎいうても、反対に、初対面の人間に、いきなりらぶらぶ〜、なんてあるやろうか、普通?」
「何の話や?」
「“だいこんいんげんあきてんじゃー”やもん。好き嫌いはあるよ〜。初めはけったくそわるー!って思うても、不思議ない
やろ〜。しっちゃんやって、初めは貴明にボロクソやったやないの〜。」
やおら、珊瑚の心の流れが読めてきた瑠璃。
「―― リナの事か、もしかして?」
「うん、あの子も、“だいこんいんげんあきてんじゃー”で、心があるんなら、いろいろ思惑あるはずや。無条件にご主人様
に従う、“普通のメイドロボ”、一般販売用のリオンとは違うはずや。東吾のおっちゃんが、意味深なことばかり言うとったが、
なんとなく、読めてきたよ〜。」
瑠璃はボソリと呟く。
「・・・・ホンマに、リナに好かれとるんか、雄二は?いんやそもそも、リナは一体、何考えてるんやろ?」
21 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(7/11)
2008/08/03(日) 22:33:36 ID:TIe3lI9U
イルファと別れたミルファは、貴明とこのみの足取りを追おうと、再び歩み始めていた。
―― ん、もう、あたしってば、ダーリン追っかけて、何したいんだろ?このみちゃんに嫉妬?自分で突き放しといて、そんな
の虫が良過ぎるよね。ただのストーカーだよ、こんなの・・・・
・・・・でも、会いたいんだもん。とにかく。どうしても。
―― どこから探そう。遊園地?映画館?テーマパーク?水族館?商店街?
二人の廻りそうなところを思い浮かべながら、顎に手を当てて歩んでいると、視線の先、タバコ屋の前、四つ角の歩道に、
車椅子で佇む少女の姿が見えた。
―― あれは、この間、学校の段差でひっくり返りそうになってたのを、助け起こした娘 ――
小牧姉妹の、妹だった。
「河野貴明の顔なんか見たくない。あたし、ここで待ってるから。」
貴明の見舞いにやって来た姉の愛佳に引っ張られてきたものの、どうしても、わだかまりが取れず、姉とは離れた位置
まで逃げてきた郁乃。
―― “ うーん、ちょっと、バス停から離れ過ぎたかな。後で、水族館行く予定だし。もう少し戻るか。
しかし、河野貴明、あのロボッ娘に絶縁されたとか。ふふん、いい気味だわ。・・・・って、ちょっと待て。それって、お姉
ちゃんにも、またチャンス復活って事!?あ〜なんかそれも不愉快だわ。”
降り立ったバス停まで戻ろうとハンドリムに手をかけたら、反対車線側の停留場に停まっていたバスが、丁度発車する
ところ。
目の前を通り過ぎていくバスの窓を見やったら、見たことのある顔が中にあった。
―― って、お姉ちゃんっ!?
“あたし、マンボウの姿見てると、なんか落ち着くんだよね〜。”
そんな事を考えながらバスの席から車窓をぼんやり眺めていた愛佳だが、ふと、何か、大きな忘れ物をしたような感覚に
とらわれる。
そういえば、さっき、車椅子の子が外に見えたっけ ――
「―― っ!! あーっ!いっけないっ!?郁乃−っ!!」 素っ頓狂な大声に、乗客達が皆愛佳の方へ振り向いた。
焦りまくる愛佳。「あ、あわわわわ・・・・」
22 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(8/11)
2008/08/03(日) 22:35:22 ID:TIe3lI9U
“―― 自分の妹を忘れ物するなんて。息子を電車に置き忘れてきた某有名球団の終身名誉監督かよ?”
姉のあまりのそそっかしさに、呆れて溜息をつく郁乃。―― ま、そのうち気付いて、戻ってくるでしょ。
逆に、姉を放置して、さっさと水族館に行ってしまいたい誘惑がむらむらと湧き起こってくる。
半ベソをかく姉の顔が目に浮かぶ――
・・・・ふと、足元に目を落とすと、人影が。
思わず背後を振り向いた―― あ ―― あんた―― メイドロボ?
振り向いた先に立っていたのは、ミルファ。
ミルファが口を開いた。「―― 郁乃ちゃん、だよね?いいんちょの、妹さん」
背後のミルファを一瞥してから、ぷいっと顔をそむけ、さっさと車椅子を進めようとする郁乃。
「あ、ちょっと待って!?」 呼び止めたミルファ。
「何よ?あたしこれから行くとこがあんの。急いでんだから。」
「今、走ってったバスの中に、いいんちょの顔見えたんだけど。あたし、目がいいから見間違えじゃないと思うよ?」
「・・・・・」
「はぐれちゃったの?あたし、押してってあげよっか?」
「何馬鹿なこと言ってんの?次のバス乗って、水族館で合流した方がよっぽど早いに決まってんじゃない。放っといて」
「いいんちょ、慌ててたよー。次のバス停で降りちゃうと思うな。あたし、近道知ってるし、あたしの足なら、多分、先回り
出来ると思うよ。」
「あんた、メイドロボでしょ?人間が余計なおせっかいしなくていいって言ってんだから、その通りに聞けばいいじゃない。」
「おせっかいの好きなメイドロボが一人くらい居ても、いいと思うけどな〜☆」
そう言うが早いか、ミルファは郁乃の背中につき、車椅子のハンドルを握る。
「ちょっちょっと、待ちなさいよっ!?」
「むふ〜ん、行くよー。しっかり握っててね。・・・・・・レディー・・・・・ゴーッ!!」
グンッ!と、物凄いGで、バックレストに押し付けられる郁乃。ジェットコースターのように、周囲の景色が流れ始めた。
「ちょっちょっとぉ〜〜〜っっ!!きゃぁああああ〜〜〜〜〜っっ!!いやぁあああああ〜〜〜っっ!!」
23 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(9/11)
2008/08/03(日) 22:37:39 ID:TIe3lI9U
少なくとも、それは車椅子で味わえるスピードではない。気分はツール・ド・フランスか、いやいやそんなものではなく、
ラリーカーのインカー映像か。
どんどん周りの景色が小さくなって、バニシングポイントに向かって消えていく。
「―― まだまだ全然、全開じゃないよ?今度ロボサッカーの試合、見においでよ♪」
「ヒィイイイイ〜〜ッ!!とっとにかく、止めて、止めてぇええええ〜〜〜っっ!!!」
くるりと、ミルファは右に舵を切り、小さな路地に突入していった。それが、近道なのだった。
狭い道幅で、両脇の建物との距離が近い分、スピード感はいや増した。郁乃はとうとう、思わず目をつぶる。風圧だけで、
そのスピード感を実感する郁乃。
その路地を抜けて、開けた道に現れたミルファ達。また右に舵を切って、バス通りの歩道を突き進む。
―― やがて、先に、バス停が見えてきた。急停車するミルファ。
「ひゃうんっっ!!」 逆Gに、悲鳴を上げた郁乃。
「ふぅ・・・・さぁて、先回り出来たかな?」
辿って来た方向を見やるミルファ。・・・・・果たして、やがて、バスが近付いてくるのが見えた。
ぷしゅーっ、と音を立てて、バスが停車する。扉が開くと、愛佳が慌てて飛び出してきた。
「いけないいけない、早く、引き返さないと―― ・・・・って、アレレェェ〜〜〜ッ!?郁乃っ!どうしてっ!・・・・あっ?・・・
はるみさん・・・じゃなくて、ミルファさん!?」
にばっ、と悪戯っぽく白い歯を見せて笑い、Vサインを見せるミルファ。車椅子では、郁乃がぐったり頭を傾げて、白目を
むいている。
「もう、いいんちょ、ホント、そそっかしいよね〜。でも追いついて良かったね☆」
ミルファのそそっかしさも相当なものだが、そこは棚に上げる彼女である。
「あ、ありがと、ミルファさん・・・・ほら、郁乃、起きて起きて。」 うう〜んと、呻きながら目を覚ます郁乃。
24 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(10/11)
2008/08/03(日) 22:39:54 ID:TIe3lI9U
「それじゃ、あたしはこの辺で。じゃあね☆」
「―― あっ?ちょっと待って!」
その場を駆け去ろうとするミルファを、呼び止める愛佳。
「ん?何?」 ぴたりと立ち止まり、愛佳達に振り返る。
「・・・・こ、河野くんも、元気なったみたいだし、ミルファさんも、明日は学校、来てくれるよね?」
ミルファは、やや考え込む様子が見て取れたが、やがて、笑顔を見せて、言った。
「うん。―― これから、ダーリンともちゃんとお話する。じゃあね。」
ふたたび駆け去っていくミルファの背中を眺めながら、思う愛佳 ――― あ〜あ、彼女達、やっぱり、仲直りしちゃうかな。
ちょっと残念、なんて、思っちゃ駄目、だよね・・・・。
同じように、去っていくミルファの後姿を目で追っていた郁乃だったが、クスッ―― と、笑みを漏らしたように、愛佳には
見えた。
「あれ?郁乃、どうしたの」
「別に。」と言って、ぷいっとあさってを向く郁乃。
―― ・・・・あいつ、面白い・・・・。――
ひそかに思う郁乃であった。
25 :
いわゆる普通のメイドロボ 第五話(中)(11/11)
2008/08/03(日) 22:41:19 ID:TIe3lI9U
――――――――
「さぁ〜っ、リナちゃん、どこ行きたい?」
リナの手を引きながら、繁華街へ向かう街路を歩む雄二。
「そ、そうですね・・・・それじゃ・・・・」
リナが言いかけたが、雄二がそれを遮ってしまうように、言った。
「そっ、そうだっ!映画、行かない?“小林サッカー”の新作、公開中だってさ。イルファさんも推薦してたしさ。」
―― “何よぉ、こいつは?自分で好きなところ選べと言っておきながら、勝手に決めちゃうわけ?・・・・そんな映画、見たく
もないわよ。
イルファはサッカーロボだから、見たがってるだけでしょ ―― まぁ、仕方ないか。こいつは『ご主人様』だから。”――
と、リナの心中の声。
返すリナ。「そうですね、それがいいと思います。」
よーし決まった、それじゃ行こうぜ、と、リナの背中に手をかけながら、繁華街の中にある映画館へと向かう雄二。
“―― まったく、デリカシーに欠けるやつね。どうせだったら、河野貴明がマスターだったら、良かったのに・・・・でも、私
は、黙々と、務めを果たすだけ・・・・。こいつは、このデートが終わったら、まさか、私の体を、求めて来る気だろうか――?
あの尻軽のミルファのように、こいつに股を開いて見せろって――!?
―― ううん、それすらも、私はこなしてやるわ。何しろ、私は完成されたメイドロボ。HM-16eリオン・カスタム。未完成品
の、妹のイルファ達とは違う。・・・・『心』なんかに、束縛されたり、躊躇したり、しないんだから。どんな指示だって、果たし
てみせる―― 。”
―― 心中で、ひとりごちるリナであった―― 。
26 :
238
2008/08/03(日) 22:46:20 ID:TIe3lI9U
SS本スレの238です。
271さんの助言に従い、こちらに疎開してまいりました。
今後続きは、こちらで投稿させていただきます。
前半、15,16は、板の使い勝手がわからず、改行がおかしな事になって
しまったので、その後から直してあります。
投稿規制かからないのは、便利ですね。
それでは。
27 :
名無しさん@chs
2008/08/04(月) 00:21:20 ID:J9S4rYrs
投稿乙。
なんだかリナの存在が残酷ではあるなあ。
こんな子には幸せになって欲しいものだ。
規制がないのはおめでたいっすね。
では投稿がんばってくださいな。
28 :
名無しさん@chs
2008/08/04(月) 21:18:35 ID:S51I2SaE
乙〜
リナもなかなか素直じゃないですな。モデルのせいか名前のせいかw
個人的には別にスレに投下しても良かったと思うけど、
こっちでも応援するのでがんがれ
郁乃とメイドロボでは、前にシルファと絡む奴があった(書きかけか)けど、
意外と噛み合う組み合わせかもね。しかし白目むいた直後に余裕だないくのんw
29 :
238
2008/08/05(火) 00:52:35 ID:CBecZPn2
鳩2SS保管所の方にお願い
こちらに投下した分のSSは、保管所に載せないで欲しいのですが。
もう本スレからは忘れ去られる方向でひっそり行きたいので・・・。
SS本スレの方に、投下の告知も、しない事にしました。
という事で、宜しくお願いします。
30 :
いわゆる普通のメイドロボ 投稿中止
2008/08/09(土) 09:51:45 ID:0oW9GS62
もう誰も覗いていないと思われるので、そろそろ、幕引きにしたいと思います。
続きを一気投下、ではなく、とりあえず、放り出す事にしました。
ここにきて、異常に忙しくなってしまった事、結末とか中間の主なイベントまでは考えてあるけど、その間を埋めるネタ
がどうしても思い浮かばず苦痛になりつつある事、誰も望まないSSを自己満足だけで落としている事が空しくなり、
どうにもモチベーションが上がらない事、が主たる理由です(2番目が理由の大半占めますが)。
何がしたかったのかを、この先の主なイベントとかラストにちょちょっと触れて紹介をば。
・ゲームセンターでメイドロボ・リナと由真のクレーンゲームバトル。
・貴明とミルファは、ツインタワーで再会して仲直り。
・瑠璃が提案した身障者向けのメイドロボお試しキャンペーンで、ミルファが郁乃の1日メイドに。郁乃はメイドロボの
便利さを実感して、姉の負担を減らそうとメイドロボを欲しがるように。
・量産型DIAは、ロボット三原則の束縛で発生するストレス低減のため、“諦めること”、“思い込むこと”、“優先順位の
低い順番から、嫌な事を忘れる事”が、学習せずとも、最初から機能として備わってる事が特徴です。その能力が効き
過ぎて、いくつか不具合が発生します。
実は、雄二はイルファに気持ちが向いてる事がわかって、リナは、その不快感からイルファの存在自体を忘れてしま
ったりとか。
・向坂家にリナとのメイドロボ契約がバレてしまって、期間満了を待たずに、契約解除される事に。
その結果、個人情報保護のため、リナの全記憶はデリートされる事になります。
・突如、行方不明になってしまったある人物から、珊瑚のもとに、メモリチップが2枚、届けられます。
量産型DIAの参考のために、“無断で”バックアップされていた、事故直前までのミルファの記憶と、リナの記憶が、
そこには入っていました。
・リナは再起動され、小牧家のメイドロボに収まります。“こっそり”、記憶を戻されて。
こんな感じで。
わざわざオリキャラ使ったりしたのは、ミルファの過去記憶に関するウルトラCが思い浮かず、既存の登場人物とか
ではどうにもならないと思った為で、安易過ぎた反省があります。もう最後まで書き切るのがしんどくなったのは、
そこにも一因が。
気が向いたら、これらの続きをここにこっそり落としているかも知れませんし、誰とは気付かれないように、全然、違う
SSを本スレに落としてるかも知れません。
まずは、一旦、撤退という事でご勘弁下さい。
口数が多過ぎましたね。特に“ビッチ”云々は軽口が過ぎたと反省しています。ミルファをえこひいきしているのは、
もうSS見れば明らかだったりするんですが。
ご支援いただきました諸兄ありがとうございました。
それでは。
31 :
名無しさん@chs
2008/08/09(土) 12:54:05 ID:Uy9fpd9c
>>30
なんだよー、いじめに屈するなよー。
少なくとも俺は楽しみにしてたのに……。
もしモチベーションが戻ったらぜひまた書いて欲しいな。
待ってる!
32 :
名無しさん@chs
2008/08/09(土) 13:50:38 ID:Jj3jAz7k
もう何を言えばいいのか分からないけど……。
口数が多過ぎましたね。特に“ビッチ”云々は軽口が過ぎたと反省しています。ミルファをえこひいきしているのは、
もうSS見れば明らかだったりするんですが。
この一文だけを例にとって言うね。
あのさ『ミルファをえこひいきしているのは、もうSS見れば明らかだったりするんですが。』コレは全く必要ないでしょ。
『反省しています』でやめときゃいいのに、上記した部分をつけ加えるのは憂さ晴らしにしか見えないかな。少なくとも俺にとってはね。
ぶっちゃけ、「ミルファえこひいきしてるのは明らかなのに叩いたスレ住人が馬鹿」って言ってるのと同義になっちゃうんですよ。
なんつか、もう全てにおいてこういう『一言余計』な文章ばかり書いてるでしょ。ホント、こういうのはなおしたほうがいいと思う。
これこそ余計なお世話かも知れないけど、なおさないとまた同じように叩かれて追い出されちゃうよ……。
33 :
名無しさん@chs
2008/08/09(土) 16:24:44 ID:83b2Z0PQ
>>32
ホントに余計なお世話だ。作者に負けず劣らず一言余計と思わんか?
作者も叩く連中も、お互い捻くれ者同士で、どうにも噛み合わないから、もう匙投げちゃったんと違うか?
ここは作者の方が引いてやったんだからもうそっとしといてやれよ。
とりあえずおつかれ様でした。
34 :
名無しさん@chs
2008/08/09(土) 19:58:36 ID:4oZd20aA
拾うしか能のない人間からしたら、投稿者の人間性なんかどうでもいいんだよ
ろくに作品の内容なんか見てない粘着どもの揚げ足取りのせいで作家に見限られるのは、畜生としか言いようが無い。
作品内容に関係の無い事であれこれ書かれるのは間違いなくモチベーション下がると思うよ
氏んでいいよ荒らし共_| ̄|○
>>32
どうとでも読めるだろ
そういう受け取り方をするから、揚げ足取りと言うんだ
35 :
名無しさん@chs
2008/08/09(土) 21:51:04 ID:qifQR6IU
>>31
>口数が多過ぎましたね。特に“ビッチ”云々は軽口が過ぎたと反省しています。ミルファをえこひいきしているのは、
>もうSS見れば明らかだったりするんですが。
ひとつ聞きたいんだけどさ、あなたは誤解されることを覚悟した上でそういう発言してるの?それとも天然なの?
俺は煽りの一つとして意図して、誤解を誘発することを承知の上で発言をすることはある。
あなたも同じ事をしてるいるのなら、別にそれ以上あなたに言うことはないが、
もし「誤解されたくない」と思っているなら、文章の書き方を基本からやり直した方がいいと思うよ?
これは煽り抜きで、真面目な話。無駄に誤解を招く文章を書いてるんじゃ、誤解されても文句を言えないだろうに。
極端な話「あなたも悪いが僕も悪い」と「僕も悪いがあなたも悪い」の違いだけで、
交渉が成立するか決裂するか変わる事もあるわけで、そういう配慮ができないというのは、
配慮が出来ないことそれ自体が問題というよりも、その背景となっている物事の
考え方が問題。
引用は前後するけど
> もう誰も覗いていないと思われるので、そろそろ、幕引きにしたいと思います。
> 続きを一気投下、ではなく、とりあえず、放り出す事にしました。
> ここにきて、異常に忙しくなってしまった事、結末とか中間の主なイベントまでは考えてあるけど、その間を埋めるネタ
>がどうしても思い浮かばず苦痛になりつつある事、誰も望まないSSを自己満足だけで落としている事が空しくなり、
>どうにもモチベーションが上がらない事、が主たる理由です(2番目が理由の大半占めますが)。
自分が辛くなったからといって安易に放棄するべきではないという点は
>>30
の意見と同じだね。
ちょっと挫折したら途端に放棄するようなヘタレには相応の評価しかされないよ。
36 :
30
2008/08/09(土) 22:15:40 ID:rS/tWBqU
ありゃりゃ、まだコメントつけてくれる方がいたのか(苦笑)
保管庫管理人の方にお願い。
ここに投下した分は、保管しないで下さいと書きましたが、撤回。
ご判断にお任せします。
未完成品を掲載される事に意味があるのかと言えば疑問はありますが、痕跡を残してもいいかなくらいの気持ちは
ありますので・・・・。
別に叩かれたから去る訳じゃありません。
一旦舞い戻った時点で叩きが存在する事は重々承知です。
ニーズがあるか、ないか、だけが問題。
私も充分な余暇の時間のある人間じゃないので、待たれてもいない事よりは、もっと有意義な趣味に時間を割り当て
たいだけの話です。
どうしようもなく暇になって、他にやる事もなくなったら、また投稿する可能性がある事は否定しませんが。
>>35
私の直近のレスは30だよ。
そんな事のチェックもできん人に、揚げ足取られるのは心外だね。31さんに失礼だろう。
それでは。
37 :
30
2008/08/09(土) 22:38:03 ID:rS/tWBqU
あ、待っているというコメント下さった方も居ましたが、明らかにごく少数とお見受けしたので、こういう判断としました。
御免なさい。
それでは、今度こそ本当にさようならです。
38 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 00:47:01 ID:WRIgIwyI
俺にとっちゃこの作家が荒しみたいなもんだったから去ってくれるなら嬉しいけどな。
この人が投下するとスレの空気悪くなって、空気を元に戻すためだけのお茶濁しSSしかなくなるからホント嫌だったんだ。
こうして去ってくれることに対してだけは心からお礼を言うよ。本当にありがとう。
まあ、流石に一時期のような賑わいは望めないだろうけど、これからも空気読める作者さんがちょくちょく投稿してくれるっしょ。
そういう人と一緒に盛り上げていこうぜ。
39 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 01:11:53 ID:qifQR6IU
>>36
>ここに投下した分は、保管しないで下さいと書きましたが、撤回。
> ご判断にお任せします。
> 未完成品を掲載される事に意味があるのかと言えば疑問はありますが、痕跡を残してもいいかなくらいの気持ちは
>ありますので・・・・。
あなたって常に「言いっぱなし」なんだね。後始末の方法もろくに考えずにとにかく
思いついたことを言ってみるわけだ。あなたの発言がコロコロ変わる理由が分かったよ。
> 別に叩かれたから去る訳じゃありません。
> ニーズがあるか、ないか、だけが問題。
> 私も充分な余暇の時間のある人間じゃないので、待たれてもいない事よりは、もっと有意義な趣味に時間を割り当て
>たいだけの話です。
なんか一生懸命いいわけしてるね。こういうのを「言い訳」というんだよ。絵に描いたような、ね。
大体、自分の作品を人に見てもらいたい思ったからこそ始めたのだろうに。ニーズがないというのなら、
ニーズがあるような作品にしよう、もしくはニーズが無くとも自分が描きたいものを描ききろうとは思わなかったわけ?
自分の作品を公の場に出すという事は、それが支持されない(ニーズが無い)リスクも同時に背負い込むことなわけで、
そのリスクに耐えきれない人は初めから自分の作品を多くの人の目に触れる所に出さなければいい。
結局ね、自分の作品がニーズがあるような作品にしたいのなら、そうなるように自分自身が向上して
いかなくては駄目だろうそれを「支持されないから」「充分な余暇の時間のある人間じゃないから」
と逃げを打っているからいつまで立ってもヘタレのままって事。
> 私の直近のレスは30だよ。
> そんな事のチェックもできん人に、揚げ足取られるのは心外だね。31さんに失礼だろう。
いやそれはまさにあなた(
>>30
)へのレスのミスなんだけどね。まあムキになっちゃって。
40 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 05:02:43 ID:YRTRs8s2
作家に逃げられるのが怖くて誰も批評しないってな事を書き込んだ人がいたが、この作家さんはいよいよ戻って来ない
空気がプンプンなので、あえて批評してみるぜ。
コメントばかり掴まえての批判ばかりで、作品評価が皆無なのがあまりに不自然だったので。
全体的にとても真面目な文章を書く人で、投下当初は迷いがあったのか、割と軽めの路線を狙ってるのかと思ったけど、
「近未来のイブ」の続編なのが明らかになってからずっと暗めの調子に貫かれるようになってる。
「メイドin有明」みたいな軽めのSSも落としてるようなんで、おそらく狙ってそうしてるんだろうと思う。
時事ネタ的なギャグが時折見受けられるけど、はっきり言って不自然。年代入ってて理解出来ないのもあるし。
もしかしてこの人結構おじさん?
内容暗いのは、誰もが敬遠したがる三宅シナリオ準拠なんで仕方がないかも。かつ、文体の重さで、それが一層強調
されちゃってる感はあり。
でもあえてそこに踏み込んだチャレンジャー精神は評価したいね。臭いものに蓋をしたままでは先へ進めないから。
「イブ」で、シルファとミルファが大喧嘩したくだり書いたのなんかは、思わずやってくれたと思ったけどね。
コメントとか枝葉に批判が集中するのは、そもそもSSの内容が気にくわないってのもあるんだろうけど、賛否両論あっても
いいんじゃないかと思う。
読者迎合型のSSばっかりになっていったら、閉塞化へ向かっていく気がする。
そもそも、真面目に捉えたSS落としてくれる作家さんが排斥されて去っていくってのは、警鐘と捉えていいんじゃないか?
もうTH2のジャンルも終わりだと。真面目に向かい合ってくれる人はそのうち皆無になるような気がする。
とにかく、いろんなSSが投下される事を望んでるんだよ。
明るくて軽いSSばっかりになっちまったら、それこそつまらない。スレの主旨で、そんな制限はないだろ?
この作家さん、粘着に目をつけられて術中に嵌っていって、よせばいいのに「余計な一言」で傷口広げて、去っていく羽目
になった。
2ちゃんねるには様々な罠が潜んでる。それを如実に示してくれただけでも投下してくれた意味はあったと思うけどねw
41 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 09:36:42 ID:lkkdVN+I
>>38
>この人が投下するとスレの空気悪くなって、空気を元に戻すためだけのお茶濁しSSしかなくなるからホント嫌だったんだ。
投下されたSSは<<空気を戻すためだけ>>のSSか。
SSの意欲も内容も否定するようなお前の発言を他の作者達が見たらどう思うかね?
どう見ても、お前の発言はSSスレを過疎らせたい人間のもの。
いいかげん、私は荒らしですって素直に認めろよw
42 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 09:56:28 ID:lkkdVN+I
それから、
>>30
さんのSSが支持よりも反発を招いた理由は一般論的に言えると思うので参考までに
SSが嫌われる要素は沢山あるけど、特に多いのが以下の3つ。
@オリキャラ
A俺設定
Bキャラの原作からの乖離
なお、Bの中でも特に嫌われやすいのがキャラの最強化と卑小化(これは表裏一体)
>>30
さんのSSは、
@オリキャラあり、半オリキャラ(原作では名前だけとか)あり
Aメイドロボ関連のオリジナル設定が前面に出てくるストーリーと描写
Bミルファ以外のヒロインの悪役化、些細な事で大仰に反応する展開
と、@AB全部満たしていて、しかもやや暗めだったから、
SSの性質の時点でかなりマイナスを抱えてのスタートだったんだな
もちろん、それで自動的にダメってわけじゃないし、
それを挽回するくらいの魅力があれば支持者も出るんだろうけど、現実にはなかなか難しいものだ
ただ俺個人的には、SSなんて好きに書けばいいと思うし、
>>30
さんのSSはそれで良かったと思う
叩かれたって「俺は書きたかった」と開き直ってればいいんだ
ネットの、それも2chで他人の言うことをいちいち気にしてたら神経保たないから、
今後似たような活動をするときはもっと気楽に構えたらどうかな?
とにかく、災難だったけど色々とお疲れ様でしたm(_ _)m
43 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 14:22:02 ID:6Pc5dfQg
んー、嫌いなSSとか好きなSSっていうのが各個人にあるなら、
指針としては知っておきたい気もするねえ。
それに沿うことができるかどうかは別として。
44 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 19:03:19 ID:2ZdDPV3U
SSの内容の好き嫌いというよりも、荒らし共がしてやったり、って感じなんじゃないの、今回の場合。
そもそも嫌いなSSだったら端から読まないし、過剰反応が起きる事自体が変。
内容自体への批判もほとんどないしね。
また別の作者が標的にされるだけの話。
今後は投稿されるSSの内容も幅が狭くなるな。
つけ込まれる隙与えないように、投稿者は身構えちゃうだろうから。
そういう意味では
>>30
氏には毅然とした態度で続けて欲しかったんだが、本人が苦痛だと言ってるんじゃ仕方ないか。
45 :
名無しさん@chs
2008/08/10(日) 21:02:09 ID:NldXql/s
保管庫に置いてある、
>>30
さんが落としたと思われるこみパネタのが割といい感じ
これからコミケ参加する人なんかは結構参考になるかも。カッタの列形成の描写なんか結構生々しくてなw
ああいう軽めのSSに傾注してればよかったのに。
シリアスなのが見たいというリクが入ってそれに乗った時点で、既に罠が張られてたんかな
46 :
名無しさん@chs
2008/08/11(月) 00:28:02 ID:6Pc5dfQg
シリアスが罠か。
まあ軽めのコメディや萌えが無難で鉄板なのは分かるけどね。
問題も起き難いだろうしね。
ダークとか過激エロを本スレでやるっていうのはもう無茶なのかね。
オリキャラとかクロスオーバーとか。
黒このみもずっと見てないな。
47 :
名無しさん@chs
2008/08/13(水) 13:48:38 ID:+AILDcdI
短気起さずに夏休みが終わるまで待てばよかったのに
>>30
48 :
名無しさん@chs
2008/09/21(日) 11:02:38 ID:cX9idsR2
本スレで誰も指摘しないみたいなんで、こっちで呟いてみるか
614氏のよっちSS(3姉妹SS?)、どう見ても、
>>30
氏だよな。
文体とか言い回しとか、ロボに執着してるあたりとか。
ま、変にオリキャラに拘ったり、キャラ貶めたりしない限りは、
無問題かと。
49 :
名無しさん@chs
2009/09/02(水) 12:43:15 ID:BkRpslaU
今回の選挙で、まずは創価公明撃退、そして、選挙後に民主党に巣喰う反日左翼を撃退。
というシナリオが背後で動いている気がする。
ここまで見据えてのシナリオで小沢の時に検察が動いたのだとすれば、もう見事だとしか言い様がない。
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